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【レビュー】25年を経た『美少女戦士セーラームーンEternal』は、大人になった“いまの自分”のための映画だ!

コラム

【レビュー】25年を経た『美少女戦士セーラームーンEternal』は、大人になった“いまの自分”のための映画だ!

敵ながら「夢を純粋に応援」するホークス・アイは、今作屈指の名シーン

まこちゃんの夢が語られるホークス・アイとの会話は、本作の見どころの一つだ
まこちゃんの夢が語られるホークス・アイとの会話は、本作の見どころの一つだ[c]武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」製作委員会

原作に沿った脚本である今作にも、ささやかに肉付けされているシーンがある。そのひとつが、セーラージュピターこと木野まこと(まこちゃん)が敵のホークス・アイと「夢」についてやり取りするシーンだ。
まこちゃんが初めてホークス・アイと出会うのは、ホークス・アイがやっている小さなスパイス専門店。そこでこんな会話が交わされる。

ホークス・アイ「アタシね、こういう小さなお店を持つのが若い頃からの夢だったの」
まこと「じゃあ、夢が叶ったんですね!」
ホークス・アイ「叶ったんじゃなくて、叶えたのよ。(中略)でも、夢はまだ続くの。いつか世界中にお店を開いてみせるわ」
まこと「あの、私の夢も、いつかお店を持つことなんです。お花屋さんか、ケーキ屋さんの」
ホークス・アイ「まあ、素敵!絶対実現させてね。目標を決めたら若いうちから努力しなきゃダメよ?」
と、ホークス・アイは魔除けのお守りをくれる。結果的にこのお守りは敵の罠ではあるのだが、「まこちゃんの夢を応援したい」という気持ちだけは本物だったのではないかと思う。それが読み取れるのが、次の劇場版オリジナルのシーンである。ホークス・アイは、セーラージュピターに倒された際に、こう言って息絶える。


「アタシの夢はここまでみたいね…。束の間でも自分のお店を持てて、幸せだったわ…。あなたも夢…、絶対に叶えなさいよ…」。

懐かしさいっぱいのエンディング曲

ところで、「セーラームーンで好きだった歌」と聞かれて思い浮かべるのはなんの曲だろうか。もちろん一番有名なのは「ムーンライト伝説」ではあるが、エンディング曲が印象に残っているファンも多いのではないかと思う。第5期まで続いたアニメのなかで、起用されたエンディングは7曲。ほぼ期ごとに曲が変わっていて、以下のようになっている。

「美少女戦士セーラームーン」:HEART MOVING/プリンセス・ムーン
「美少女戦士セーラームーンR」(「S」の第2話まで):乙女のポリシー
「美少女戦士セーラームーンS」:タキシード・ミラージュ
「美少女戦士セーラームーンSuperS」:私たちになりたくて/“らしく”いきましょ
「美少女戦士セーラームーン セーラースターズ」:風も空もきっと…

今作の「デッド・ムーン」編は90年代アニメシリーズで言うところの「SuperS」にあたる。というわけで、劇場版の前編では「私たちになりたくて」が、後編では「“らしく”いきましょ」が流れるのだ。特に「“らしく”いきましょ」のほうは、エンディング曲のなかでも「乙女のポリシー」と並んで人気が高い。

「セーラームーン世代の社会論」で、著者の稲田豊史は「セーラームーン」のエンディング曲のなかでも、「乙女のポリシー」が

「乙女」という言葉の意味を再定義してセーラームーン思想の根幹をなした、最重要EDであると断言したい

と指摘。
その上で、「“らしく”いきましょ」について、

「乙女のポリシー」同様、女の子の矜持として相手に決して媚びたりはしない、自分を曲げて合わせない。自分“らしさ”は崩さず、その上で勝負をかけるのだ

と分析する。

武内直子が作詞を手掛けた「“らしく”いきましょ」は、ファンならずとも必聴の名曲!
武内直子が作詞を手掛けた「“らしく”いきましょ」は、ファンならずとも必聴の名曲![c]武内直子・PNP/劇場版「美少女戦士セーラームーンEternal」製作委員会

「“らしく”いきましょ」には、まさに「美少女戦士セーラームーン」に通底するテーマがすべて詰まっているのだ。90年代アニメシリーズのエンディング映像では、ちびうさの恋愛を追ったストーリー仕立てになっているため、ちびうさの恋愛応援ソングというイメージを持つ人も多いかもしれない。けれど、改めて歌詞をじっくり読んでみると、まさにセーラームーン“らしさ”満載の曲であるとわかる。

地上波で「“らしく”いきましょ」が流れていたのは1995年~1996年。約25年の時を経て、どのようにスクリーンに復活するのかをぜひ見届けてほしい。

文/朝井麻由美

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