『樹海村』撮影現場で起きた怪奇現象とは…清水崇が『ズーム』俊英監督に明かす、コロナ禍での制作秘話
古くから霊峰として信仰されてきた日本のシンボル・富士山の麓に位置し、自殺の名所として世界的にも有名な “富士の樹海”を題材にした話題作『樹海村』が、2月5日より公開となった。
MOVIE WALKER PRESSでは、Jホラー映画の第一人者である清水崇監督と、清水監督の「呪怨」シリーズから多大な影響を受けたイギリスの若手監督で、ロックダウン中にオンラインミーティングツール「Zoom」を使って製作したホラー映画『ズーム/見えない参加者』(公開中)が賞賛された俊英ロブ・サヴェッジ監督の、“日英ホラー対談”をオンライン上で実施。
対談の前編では、Jホラー映画の魅力について語り合った2人が、後編では清水監督のホラー映画に対するメソッドや、撮影現場で起きた恐怖体験について熱く意見交換を交わした。
昨年2月に公開され、大ヒットを記録した『犬鳴村』に続く“恐怖の村”シリーズの第2弾となる本作の舞台は青木ヶ原樹海。決して足を踏み入れてはいけないその場所に伝わる数多くの俗説と、「絶対に検索してはいけない」とネット上で語り継がれる“コトリバコ”を題材した物語の主人公は、古くから伝わる強力な呪いに触れた姉妹だ。
富士の樹海にほど近い場所に暮らす天沢家の長女、鳴(山口まゆ)と次女の響(山田杏奈)は、ある時幼なじみの家の軒下で不可解な箱を見つける。それを境に2人の周囲で奇妙な現象が相次ぎ、やがて魔の力に吸い寄せられるように樹海へといざなわれてく。そしてその森の奥深くには、何者かが暮らす村が存在しており…。
「樹海での撮影はコロナ対策以上の忍耐が必要」(清水)
サヴェッジ「『樹海村』は、まだ前半しか観ることができておらず、大変申し訳ないのですが…。ゆっくりとシーンを見せることで、これぞホラー映画だと感じさせてくれる作品に仕上がっていて、リズム感も欧米のホラー映画とは違っています。そのリズム感があるからこそ、より怖さを感じることができました。映画を作ることへの自信と忍耐も感じられ勉強になったのですが、パンデミック下でのロケ撮影はどのようなものでしたか?」
清水「いまでは世界的に当たり前になってきましたけど、撮影に臨む際にはエキストラやロケ先の協力者の人に至るまで、スタッフ・キャスト含む全関係者の抗体検査をしたり、様々な感染対策を講じて本当に大変でした。真夏でも樹海は思いのほか涼しいのですが、それでも汗が出るくらいに足場が最悪で(笑)。誰か怪我しないか心配しながらだったので、樹海での撮影はコロナ対策以上の忍耐と疲労がついてまわりました」
サヴェッジ「冒頭にYouTuberのアキナが赤いテープを持って樹海に入っていくシーンがありますね。そのテープが後のシーンでホラー要素への伏線として機能しているのを観て、目から鱗でした!僕もこういう手法を使いたいなと思って、観ながらしっかりメモを取らせてもらいました(笑)」
清水「あのテープは、ロブがまだ観れていないもっと後半でも登場してくるから、注目してね(笑)」
ロブ「申し訳ないです…」
清水「赤は注意喚起の色というのが世界共通の認識ですからね。世界中の信号機がいい例ですが、わかり易い映画の例で言えば、M.ナイト・シャマラン監督も『シックス・センス』で怖いシーンの前に前兆的に必ず画面のなかに赤いものを配置したり。しかも樹海での撮影はどこを映しても緑と茶の森がつづいているので、肉眼で見れば相当な凹凸や深みのある土地なのに、2次元の映像だと奥行きが感じられない。でも森のグリーンのなかに赤を入れることで、画面に奥行きが生まれるというメリットもありました」
サヴェッジ「なるほど、そういう些細な道具からいろいろなアイデアが生まれるんですね。僕もいつも映画の前半でアイテムを紹介して、それが後半でなんらかの形でホラー要素につながらないかと考えるんです。以前僕は、『Salt』という短編のなかで、日本の伝承でもある“盛り塩”を使ったことがあります。塩で作った結界のなかという小さな場所で、人間と魔物を戦わせたらおもしろいなと」
清水「注意を促す赤が人間の血の色であるように、海から取れる真っ白な塩は、世界共通で自然に還ったり浄化されるというニュアンスがありますよね」
サヴェッジ「あとホラー的な考え方で言えば、人間の身体を保存することもできますね!いまちょうどこの短編を長編にする予定もあるので、塩についてより深く研究して、短編の時よりもホラー要素につなげられないか探っているところです」