綾野剛×常田大希が『ヤクザと家族 The Family』で見せた、魂の交歓「“一緒に作品を作る”ことは目標のスタートライン」
綾野剛が熱演を見せた主演映画『ヤクザと家族 The Family』がいよいよ1月29日より公開中だ。企画・製作とエグゼクティブプロデューサーを務めた『新聞記者』の河村光庸×脚本・監督を務めた藤井道人の2人が再タッグを組み、1999年、2005年、2019年――変わりゆく時代のなかで、アウトローとして生きる男たちが疑似家族として強固に結びあい、やがて法により、社会での居場所を失い、追い詰められていく姿を描く。
その主題歌「FAMILIA」を提供したのは常田大希率いるmillennium parade。「常田大希がこの映画をどう“治癒”するのか。直観で彼しかいないと思った」と綾野からの熱い呼びかけに、どういうサウンドで答えたのか。プライベートでの親交を経て、映画と主題歌で初共演を果たした2人に話を聞いた。
「『とにかく、お前が思う最高なものを出してくれ』という気概に触れて、こっちもちょっと気合を入れなきゃと」(常田)
――綾野さんが常田さんに主題歌を依頼したのは、常田さんがmillennium paredeでアルバムごとにアーティストを束ねて行く在り方が、『ヤクザと家族 The Family』で描かれる男たちの集団の在り方と似ていると感じたからですか?
綾野「単純に常田大希が、この映画を見てどう思うのかを知りたかった。この映画をどう“治癒”するのか。直観でした。僕は音楽家、常田大希にお願いしました。それこそ彼の奏でるチェロだけでもいい。すべては、大希に託す事が最大の敬意だと思ったんです。オフラインでしたが、映画を観てくれて、最終的にこの楽曲の座組は『millennium parade』に。曲が出来上がるまでは、(井口)理が歌うというのも知りませんでした。シンプルに『FAMILIA』に必要な座組みを組んだ大希は、この楽曲の監督なんです。まだ2年ほどの付き合いですけれど、一つ叶えたいと思っていた目標のスタートラインが“一緒に作品を作る”ということだったので、引き受けてくれて心から感謝でした」
常田「確かに音楽を頼みたいとは頼まれたんですけど、ディレクション的な注文はほとんどなくて。『とにかく、お前が思う最高なものを出してくれ』というオファーのされ方でした。その気概に触れて、こっちもちょっと気合を入れなきゃと、オファーに対してすごく純粋な形で向き合えたというか。入りが純粋だったので、やりがいがありましたね」
――映画の題材がヤクザということですが、例えば津島利章さんによるあまりにも有名な『仁義なき戦い』の主題歌などのメロディはちらっと頭にかすめたりされましたか?
綾野「おもしろいことを聞きますね」
常田「ああ、もちろん。まあ、『仁義なき戦い』より『ゴッドファーザー』のほうですけど、そういう…ごついというか、雄々しいサウンドも、もちろん想定には入れておいたものの、完成した作品を観た時に、ヤクザ映画を観たという感覚がなくて。ほんと、ファミリーの映画、家族の映画だなという受け取り方をしたので、この映画にはいわゆるヤクザ映画のサウンドのアプローチは必要ないと思いました。頼まれたのが劇伴や中間部の曲だったらまた違ったんだろうけど。俺のポジションはエンディングに流れる曲ということだったので、どんどんヤクザ映画の要素は抜けていきました」
綾野「山本は第一章では生きる権利を獲得するためにもがいている男です。違う言い方をすれば、“地域密着型ヤンキー”なんだけど」
常田「確かに(笑)」
綾野「その山本に対して、舘ひろしさん演じる柴咲組長に生きる権利を与えていただけたことで、この人のためにと義理の息子の誓いを立て、本当の家族と出来なかった関係を、血のつながりがない人たちと結び、本質的な家族になっていく。今回のこの作品には3歳から70代までの俳優が集結していることに大きな意志があり、劇伴も岩代太郎さんという50代の方が作曲をしていて、そこに大希世代が共存することにすごく意味がある。そこを30代のスタッフ、キャストが立ち続ける事で、この新世界を、ホップ、ステップ、ジャンプと跳躍させている。日本映画というよりもアジア映画として作っています」