綾野剛×常田大希が『ヤクザと家族 The Family』で見せた、魂の交歓「“一緒に作品を作る”ことは目標のスタートライン」
常田「個人的に俺、山本にちょっと近いマインドを持っているというか、彼の不器用な立ち居振る舞いがすごく理解できる。映画に寄り添い過ぎている気はないんですけど、主人公とのリンクが人間的にもあったんじゃないかなと、なんとなく思う。多かれ少なかれ、誰の身にも起きている、生きていれば感じるような普遍的なものが、映画の完成前、オフラインの段階から浮かび上がっていたので、そこに乗っかるだけだった」
綾野「曲が出来上がるまで、すごく早かった。大希が映画のオフラインを観て、1週間ぐらいじゃない?観た直後に電話がかかってきて、『剛ちゃん、これ、傑作になるよ。書き始めるわ』って。そこから1週間たったら、『やべえのできたわ』って(笑)」
常田「挙げればいいシーンがいろいろあるんですけど…山本が、家族3人で飯食っているところとか。それと、時代と共に北村有起哉さん演じるアニキが落ちぶれていくじゃないですか。それでも、どうしようもないなかで生き抜いている姿。あとね、市原隼人さんは山本の弟分を演じているんだけど、第3章の、山本と彼との関係性もぐっとくる。磯村勇斗くん演じる翼と山本の関係もそうだし、挙げればきりがないくらい心を刺す部分があった。どこか一か所でという話じゃない。まさか自分作った曲で、号泣を加速させられるとは思わなかったよ(苦笑)」
綾野「個人的には『FAMILIA』のデモを聴いた時に、これはレクイエム(鎮魂歌)だと感じて、歌詞のストーリーの余韻に打ちのめされた」
常田「それはコンセプトというよりも、自然に湧きあがったもの。自分が愛する人に最後になにを歌うのか、どんな言葉を紡ぐのかと考えるなかで、映画と自分の想いが合わさった感じ。歌単体で聴いてもらった時、誰が聞いてもフィットするような言葉選びをして、メロディには教会の要素というか、レクイエム感を出すことは意識しました。映画の構成がこうだから、この時代だから、ヤクザはこういう状況だから…ということはあまり入れなかった。剛ちゃんも、山本を演じるうえで、背景の時代のことはあまり考えなかった、どんな時代であろうとも山本として生き抜くべきだからと話していて、俺もそうだなと。『FAMILIA』は個人的な想いからの発信となりましたね」
綾野「ヤクザである前に、家族だから。加えて血のつながりだけでは説明できない関係性もある」
常田「とにかく今回は、剛ちゃんの映画のなかでの姿と、普段の感じのいい意味でギャップを知って、役者ってすげえ、こんなに変化するんだっていうのは、見せつけられましたね」
綾野「現段階で、『ヤクザと家族 The Family』は自分にとっての集大成です」
取材・文/金原由佳