調布ロケの仕掛け人たちに聞く『花束みたいな恋をした』の撮影秘話!「嘘や作りものと感じない映画にしたい」

インタビュー

調布ロケの仕掛け人たちに聞く『花束みたいな恋をした』の撮影秘話!「嘘や作りものと感じない映画にしたい」

「カルテット」「東京ラブストーリー」などで知られる坂元裕二が脚本を務め、菅田将暉×有村架純のW主演で話題を呼んでいる『花束みたいな恋をした』(公開中)。菅田演じる山音麦と有村演じる八谷絹が、東京・京王線の明大前駅で終電を逃したことをきっかけに、あっという間に恋に落ちてからの5年間を描いた本作は、2人の出会いの場所でもある京王線沿線をロケ地としており、早くも恋の聖地として注目を集めている。

今回、このロケ地にまつわる制作秘話を聞くため、本作の制作プロデューサーである土井智生(つちいともお)、調布フィルムコミッションの山口季紗、映画やドラマのロケにまつわる 様々なサポートを行う東京ロケーションボックスの遠藤肇に集まってもらった。撮影エリアをよく知る3人に、撮影裏話や映画公開後のロケ地に関する反響、それぞれのお気に入りのシーンやおすすめスポットについて、たっぷりと語ってもらった!

イヤホンを共有して音楽を聞く麦と絹
イヤホンを共有して音楽を聞く麦と絹[c]️ 2021『花束みたいな恋をした』製作委員会

「基本的にはすべてリアル。現実世界にあるものを具体化しています」(土井)

――調布市でロケを行うことになった経緯を教えてください。

土井智生(以下、土井)「坂元さんからあがってきた脚本に、きっちりと場所の名前が書かれていたというのが大きな理由です。絹ちゃんの家が飛田給にあり、麦くんが調布近くのアパートに住んでいる、という設定がありました。なのでリトルモアの有賀高俊プロデューサーと土井裕泰監督とも『正直に制作していきましょう』という話をしていました。裏を返せば『嘘をつかない』ということです。坂元さんの想いが凝縮されている脚本を活かし、忠実に撮影をしていくことを第一のテーマとして掲げました。本作を観る方が、嘘や作りものと感じない映画にしたいという気持ちで、設定に忠実に、極力設定に近い場所をロケ地として選んでいきました」


――脚本に忠実にとなると、ロケ地選びはかなり大変だったのではないでしょうか?

土井「今回撮影を行ったロケ地は80か所ほど。同じ規模の映画だと半分くらいが普通なので、どれだけこだわり、大変だったかというのが数字でもわかってもらえるかと思います(笑)。ロケ地だけでなく、実在する書籍や映画といった2人の会話に出てくるものは、基本的にはすべて現実世界にあるものを具体化しています」

『花束みたいな恋をした』制作プロデューサーの土井智生
『花束みたいな恋をした』制作プロデューサーの土井智生

「“新宿”も一つの大きなポイントになる」(遠藤)

――脚本に忠実ということで、東京ロケーションボックスさんや調布フィルムコミッションさんがとても重要な存在となってくるわけですね。

山口季紗(以下、山口)「私自身は撮影当時の担当ではなく、現在の担当者なのですが、前担当者から聞いた話によると、土井さんたちから調布市が舞台の作品だと伺って、“映画のまち調布”として、どんな場所でも撮影できるように協力したいと強く思ったようです。調布市は、これまでもロケ誘致に積極的にかかわってきた経緯があるからこそ、今回のようなお話をいただけたので、全力で撮影をサポートしたいという思いで取り組んだそうです」

遠藤肇(以下、遠藤)「京王線沿線で撮影し、完全な地域密着型の作品にしたいという気持ちがありました。先ほど山口さんもおっしゃっていたように、調布市は“映画のまち調布”を掲げていることもあり、映画作りに積極的だということはよくわかっていたので、ご協力いただけるだろうという安心感がありました。しかし、今回は調布市だけでなく京王線沿線が舞台になるので、“新宿”も一つの大きなポイントになると思いました。5年という長い時間を描く話なので、季節は何度もめぐりますしね。撮影はたしか、冬でしたよね?」

土井「2020年1月11日にクランクインして、2月26日にクランクアップしています」

遠藤「そうそう。すごく寒い時期でした。私が担当した西新宿の地下道、タイムズアベニューの撮影も寒かったですよね」

土井「夏の設定なので麦くんはTシャツと短パンでしたね」

遠藤「足元はビーチサンダルでした。就職活動で疲れ切った絹を麦が迎えに行くあのシーンの撮影は、寒い時期だったので、役者さんにできるだけ風が当たらないようにしたいという配慮もあり、ビルの谷間などがロケ地の候補にあがっていました。実は、西新宿のあの地下道が撮影で使われることはほとんどないらしいんです。管轄は新宿警察署と東京都第三建設事務所なのですが、警察からは人目につきにくい場所での撮影は避けてほしいという話もありました。夜の撮影ということもあり、新宿警察署は都庁などの要所や歌舞伎町を抱えていますから」

土井「それはそうですよね」

冬場に行われた撮影では半袖になることも
冬場に行われた撮影では半袖になることも[c]️ 2021『花束みたいな恋をした』製作委員会

遠藤「夜間における撮影で人通りがないのは、撮影には向いていますが、警備には向いていないですから。ですが、これまで我々が新宿警察署と築き上げてきた信頼関係もあったので、無事に撮影許可が下りてほっとしましたね」

土井「撮影自体は20時から22時の2時間だけでしたが、いろいろと大変だったと思います」

遠藤「人通りがない場所とわかっていたのですが、もし人が通ったらとか、ロケだと気づかれたらなどいろいろと考えました。いまの時代、SNSなどもあるので情報を拡散されてしまったら、あっという間に人が集まる可能性もあるわけですから。そこは細心の注意を払い、対策・体制もバッチリ取っていました」

土井「我々の窓口である製作部とフィルムコミッションさんの密接な打ち合わせで、想像し得る問題点を潰していくことで、撮影の妨げになるような出来事を未然に防ぐことを念頭に置いていました。そういう意味でも、打ち合わせや信頼関係は、映画の撮影ではとても重要な要素になっています」

東京ロケーションボックスの遠藤肇
東京ロケーションボックスの遠藤肇

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