「涙で何も見えなくなった」とYOSHIKIが語る、映画『WE ARE X』が描くもの|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
「涙で何も見えなくなった」とYOSHIKIが語る、映画『WE ARE X』が描くもの

インタビュー

「涙で何も見えなくなった」とYOSHIKIが語る、映画『WE ARE X』が描くもの

日本を代表するロックバンド、X JAPANの結成後30年以上にわたる歩みを描いたドキュメンタリー映画『WE ARE X』(3月3日公開)。本作はこれまで世界20以上の映画祭に出品され、米サンダンス映画祭で最優秀編集賞を受賞、SXSW(サウス・バイ・サウスウェスト)ではデザイン部門観客賞を受賞し、各地の観客や批評家から高い評価を獲得している。YOSHIKI本人は映画を観てどのように感じたのか?インタビューでその想いに迫った。

映画『WE ARE X』について語ったYOSHIKI
映画『WE ARE X』について語ったYOSHIKI

「ソニーの試写室で初めて観た時は、途中から涙で見えなくなって…スクリーンも何もかも、よくわからなくなってしまったんです。ハンマーで後ろから殴られたような気分でした。言葉が出てこなかったですね。2回、3回と観るうちに、ようやく理解できるようになってきて、“隠し味”的なおもしろいシーンがいっぱいあることにも気づけるようになったんです。実は、個人的にあまり好きじゃないシーンもあるんですよね。例えば僕が裸になっている映像…あれはデヴィッド・リンチが撮影したものなんですが、あんなの(入れても)いいの?と(笑)」

バンドのドラマー/ピアニストで、数々の楽曲を生み出してきた作曲家で、そして約10年の時を経てバンドを復活させたリーダー。X JAPANの歴史を描くということは、YOSHIKIの人生を辿ることでもある。父親の死に始まり、幼稚園時代から一緒だったToshlの脱退、そしてHIDEの急死…。一人が背負うにはあまりにドラマチックすぎる人生だ。

「あれだけのことが起こって頭が半分変になっていたのかもしれないのですが、心のどこかでHIDEはまだ死んでいなくて、ある日急に目の前に現れるんじゃないか…とか思っていたんですね。それが、映画を観ているうちに『ああ、本当にあったことなんだな』って実感が湧いてきて、ちょっと変な気持ちになりました。個々の場面は僕も覚えているんですが、映画としてまとめられると、『何なんだこのドラマは? 誰がこの人生の脚本を書いたんだ?』って思いましたね。フィクションでも普通こんな脚本は書かないですよ。そして怖くもなりました。…この後はどんな人生が待っているんだ?って」

【写真を見る】あまりにもドラマチックな人生を歩んできたYOSHIKI
【写真を見る】あまりにもドラマチックな人生を歩んできたYOSHIKI[c]2016 PASSION PICTURES LTD.

そんな幾多の逆境を経験しながらも、精力的に活動を続けるYOSHIKI。彼の原動力は、いったい何なのか?

「自分は1回死んでいると思っているんです。1回どころじゃないですね。父親が自殺した時もそうだったし、HIDEが亡くなった時もそうだし…自分はこれまでに何回も死んでいて、今生きていること自体が奇跡みたいなもの。ファンの人たちにいただいた第2の人生、第3の人生を歩んでいると思っているんです。だから、いただいた人生をちゃんとまっとうして、ファンの人たちにお返しがしたい。海外活動についても、HIDEやTAIJIの夢だったから、その遺志を継いでやるべきなんだという想いがあります」

人生で起こった様々な出来事は楽曲にも影響を与えているという
人生で起こった様々な出来事は楽曲にも影響を与えているという[c]2016 PASSION PICTURES LTD.

映画は、悲痛な出来事がこれでもかと描かれながらも、鑑賞後は不思議とポジティブな気持ちになれる仕上がりとなっている。それは、彼らの作り出す楽曲と同様に、どんな悲劇や困難があろうと前に進み続けようとする無限のエネルギーが充溢しているからだ。

「X JAPANが解散する前――Toshlがあんなふうになる前や、HIDEがこの世から去る前は、僕らはどこかでうぬぼれていたと思うんです。当たり前のようにバンドメンバーがいて、当たり前のように何万人ものお客さんがいた。それがいかにありがたいことだったかを、空白の10年間で学んだんです。メンバーも亡くなっていますし、普通であれば再結成なんてありえないはずなのに、もう一度チャンスを与えてもらった。であれば、なんでもやってやろうと。映画にも、『不可能なことは何もない』というそんなメッセージが込められていると思います」

そしてYOSHIKIは、この映画のことを「ロックバンドの物語」であるだけでなく、「人生の物語」と表現する。だからこそ、多くの人に観てほしいのだと。

「X JAPANを知らない人に監督を任せたように、この映画は決してファンのためだけの映画ではないんです。心に傷を持っている人に希望を与えるような映画、自分が今存在することの意味…“生きる意味”を問いかけるような映画になっていると思います。だから、X JAPANのことを好きじゃない人や、興味がない人にもぜひ観ていただきたい。決して映画を観て、好きになってくれというわけではなく、ある種の使命感で作った映画なので。あと、この映画はファンの皆さんの気持ちも全部込められて出来ています。僕たちだけのストーリーではなく、タイトルが『WE ARE X』であるように、皆さんと一緒に作り上げた映画。そんな意識で観てもらえたらうれしいですね」

念願の英ウェンブリー・アリーナ公演が控えたX JAPAN
念願の英ウェンブリー・アリーナ公演が控えたX JAPAN[c]2016 PASSION PICTURES LTD.

映画の公開日にはオリジナル・サウンドトラックがリリースされ、3 月4日(現地時間)には1年越しとなる念願の英ウェンブリー・アリーナ(現 SSE アリーナ・ウェンブリー)公演が開催。X JAPANはこれで14 年10月のマディソン・スクエア・ガーデン公演、今年1月のカーネギーホールでのYOSHIKI単独公演に続き、音楽の3大殿堂を制覇することになる。そう、単に壮絶な過去を振り返っているのではなく、まさに現在進行形で世界に挑み続けている彼らの“今”に至るすべてを描いたこの衝撃作を、ぜひ劇場で目撃してみてほしい。【取材・文/Movie Walker】

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