社会復帰を目指す男の奮闘記『すばらしき世界』…登場人物たちが息づく物語の舞台“葛飾区”を訪ねる
六角精児が何度も全力疾走?三上が万引き犯に間違われる“スーパーシマムラ”
三上は特技の裁縫技術を生かした仕事を希望するが、なかなか彼を受け入れてくれる職場は見つからない。津乃田や井口らの助言を受けて運転手になろうと思い立つが、服役中に失効した免許証をゼロから取り直さなければならないと警察官に告げられ、つい激高し声を荒げてしまう。
そんな時、三上はスーパーマーケットで店長の松本(六角)に万引きの疑いをかけられ、またしても感情を抑制できない悪癖を出してしまう。しかし、誤解であったことがわかると、松本は全力で頭を下げ、三上の人間的魅力にも気づき、免許証を取れば運転手の仕事を紹介すると背中を押すのだった。
最悪な出会いをしたものの、その後は友人関係となる三上と松本のシリアスさとコミカルさが合わさったスーパーマーケットでのシーンは、JR金町駅、京成金町駅より徒歩15分のところにあるスーパーシマムラで撮影された。撮影は定休日に実施したものの、地域に根差したお店ということもあり、営業中と勘違いした買い物客がやって来てしまい、休みであることを説明するのは大変だったそうだ。
ちなみに、このシーンは松本役の六角にとってクランクインだったのだが、初日から全力疾走を繰り返さなければならなかったらしい。誤解が解けて意気揚々とスーパーを出る三上。しかし、彼は購入した商品を店に置いたままで、松本が必死で追いかけるはめに。スーパーから三上のいる地点までの距離は100mほどで、本気で走らなければ追いつくことができない。しかも、近くを走る電車やエキストラとのタイミングも合わせなければならず、なかなかOKが出なかったため、汗ばみながら六角は何度もテイクを重ねたのだとか。実は、六角は撮影前日に足を負傷し骨にヒビが入っていたらしく、つらい状態で撮影に臨んでいたそうだ。
三上の凶暴な一面が露わになる“稲増建材”
三上と津乃田はすっかり打ち解け、吉澤も交えて焼き肉店で食事をすることに。この場面で吉澤は制作する番組の意義を三上らに説いているが、「社会のレールから外れた人が、いまほど生きづらい世の中はない」という言葉に、三上と津乃田だけでなく、本作を鑑賞している人も深く考えさせられるはずだ。
しかしその帰り道、2人組のチンピラに絡まれているサラリーマンを助けるため、三上は彼らを建材置き場で半殺しにしてしまう。初めて目の当たりにする三上の凶暴な一面に津乃田は言葉を失い、カメラを回すことも放棄してその場から立ち去ってしまう。
穏やかな場面から一転、凄惨な空気感に包まれるこのシーンは、コンクリートなど建築資材を販売する有限会社稲増建材の敷地で撮影されている。三上が声を張り上げる場面だったため、近隣への影響も懸念されたが、奥まった場所にあったので難なく撮影は終了したそう。曲がったことが嫌いで正義感にあふれる三上だが、つい暴力に頼ってしまう彼の複雑な人間性が映しだされた印象的なシーンになっている。
これら葛飾区の施設を使用した撮影には、葛飾区観光フィルムコミッションの尽力が欠かせなかった。フィルムコミッションの担当者によると、様々な配慮がなされるなかで特に気を遣うのは、撮影スタッフやキャスト陣の支度部屋の用意だそう。東部地域病院では会議室、スーパーシマムラは2階の宴会場を含むいくつかの部屋、稲増建材で撮影した際は近くのお寺の協力を得て、車移動をしていたという。
人がまっとうに生きること、社会の在り方など、誰もが人生で直面する様々なテーマを三上という人物を通して描く『すばらしき世界』。その撮影ロケにまつわるエピソードを知れば、さらに作品を観る楽しみが増えるに違いない。
文/サンクレイオ翼
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