終末期治療と人間の尊厳に迫る『痛くない死に方』…東京都日野市が創出する重厚なドラマが心を揺さぶる
坂井真紀らの演技に圧倒される日野市の個人宅でのシーン
本作は大きく2つのパートに分けることができ、前半では河田の仕事に向き合う姿勢の変化が描かれ、後半では2年後を舞台に成長した彼の姿が映しだされている。ロケ地探しにあたって、まず制作側からリクエストがあったのが、後半の重要な舞台となる、宇崎演じる末期がんを抱えた大工、本多彰の自宅だった。
そこで日野映像支援隊は、日野市内で思い浮かぶ昭和レトロな平屋で、縁側と薄暗い勝手口のある家を提案したそうだ。しかし、その家は高橋監督のイメージと合致せず、別の家を案内することになったという。この家も本多の家には採用されなかったのだが、前半パートで河田が担当する末期がん患者の自宅として採用されたそうだ。
この家が登場するシーンでは、がん患者役の下元史朗とその娘の智美に扮した坂井真紀らの鬼気迫る演技が光る。本人の希望通り、“痛くない死に方”をさせてあげようと父を自宅に連れ帰った智美だが、冒頭でも説明したように、結局激しい痛みと苦しみのなかで逝かせてしまう。そんな史朗に対し、形式的に死亡宣告をする河田に対し、「自分が殺したのか?」と自責の念を吐露する彼女の姿には、心をかきむしられてしまう。
このシーンは8月のお盆の時期に、うだるような暑さの中で撮影されたそう。しかし、狭い部屋で大勢のスタッフの熱気や照明の熱にさらされても、キャスト陣は汗もかかずに涼しい顔で演技に取り組んでいたという。
智美の父が埋葬された墓地のシーンも、日野市にある善生寺で撮影されている。通常、お墓を撮影に使用する際は、墓石に役どころの名前を入れた墓石風のカバーを被せるのだが、対象となったお墓がたまたま日野映像支援隊の理事長である大貫と同じ、“大貫家”だったため、高橋監督の提案で、台本に書かれていた別の姓を大貫姓に変えてしまったのだそうだ。
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