松山ケンイチと本広克行監督が語り合う、ものづくりの喜びと三浦春馬への想い
「三浦春馬くんは、すごくバランス感覚が鋭い人だなと思いました」(松山)
――蒼と家康の共演シーンには非常に心を打たれました。
本広「刀を受け継ぐシーンは、僕も大切に撮りました。また、春馬くんと新田くんがお墓の前で芝居をするシーンでは、あまりにも新田くんの熱がすごすぎて、春馬くんが『僕、マッケンに負けちゃいましたよ』と笑っていたのも印象に残っています。
家康が死ぬシーンは実にあっけなく逝ってしまいますが、あそこは春馬くんが『死にそうになっているのに、べらべら喋るのは変ですよね』と提案されたからそうしたんです。僕たちは、家康の最後のシーンなので、盛り上げなきゃと考えて台詞を設けたんですが…。三浦春馬という役者は、本当に作品全体のことを考えられるすばらしい役者だったなと思います」
――松山さんは、三浦さんの現場での印象はいかがでしたか?
松山「春馬くんが現代の教室で、鎧を着てしゃべっているシーンがとてもおもしろくて。違和感なくそこにいるので、すごくバランス感覚が鋭い人だなと思いました。思えば、あの2つの時代をつないでいたのは家康だったのではないかと。また役柄同様に、次の世代にバトンを渡していくといった連帯感もすごく感じました」
――そんな三浦さんが急逝され、松山さんは同じ俳優として、どんなことを感じたのですか?
松山「やはり心臓が痛くなりました。また、春馬くんのように、普段から頑張って人の背中を押していく仕事をしている人は、自分自身の背中は誰に押してもらっているんだろうかと、すごく考えさせられました」
本広「なるほど。深いですね」
松山「やはり頑張っている人たちもどこかで救われないといけないなと。そういう意味で言うと、自分は春馬くんとは仕事仲間だったので、もう少し仲間として横のつながりを大事にしていかないといけないと、色々なことを思いました」
――松山さんは、そういうチームのつながりをとても大切にしている印象を受けますが。
松山「そういうことができる現場もあるし、自分1人だけで背負いこもうとしてしまう現場もあります。今回の撮影で、高校生アスリート役の子たちは、きっとみんなで苦労を共有し、終わったあとご飯に行ったり、愚痴などを言いあったりしていたと思いますが、そういうことって本当に大事だなと。僕は過去に1人で抱え込み、誰ともご飯に行かなかった現場も経験していますが、いまは、もっと楽にして、重い荷物もみんなで分け合えばいいのかなと思っています。それは仕事に限らず、普通に生きて、日常生活を送っていても感じることですが、そういうことを改めて痛感した現場でした」
取材・文/山崎伸子