モビルスーツのクオリティにも注目!『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』制作陣の鼎談で明かされたこだわり
『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』(88)公開から33年を経て映像化された『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が現在公開中だ。3月28日、「AnimeJapan(アニメジャパン)2021」にて行われたイベントをプレイバック。演出の原英和、撮影監督の脇顯太朗、制作デスクの岩下成美が出席した制作の舞台裏エピソードを紹介する。
『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、アムロとシャアの最後の戦いを描いた『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の“その後”のストーリーで、ブライト・ノアの息子ハサウェイ(小野賢章)を主人公としたアニメ3部作の第1弾。地球連邦政府が強制的に民間人を宇宙へ連行する政策“人狩り”を実施するなか、反地球連邦政府組織マフティーが始動。その新たな戦いを縦軸に、ハサウェイ、謎の美少女ギギ(上田麗奈)、連邦軍大佐ケネス(声:諏訪部順一)の交差する運命を横軸に、重厚な物語が紡がれる。
ガンダムシリーズの生みの親、富野由悠季監督による同名小説を映画化した本作。今回はシリーズ初監督となる村瀬修功をはじめ、実力派スタッフが集結しているが、AnimeJapanのステージ「Production Works Channel【プロダクション】映像を生み出すスタッフの力~『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』より~」には、そのなかから演出の原英和、撮影監督の脇顯太朗、制作デスクの岩下成美が出席。「絵コンテから映像ができ上がるまでの過程」や「そこに込めた工夫」をテーマに語り合った。
イベントでは、アニメ評論家の藤津亮太がMCを務め、演出担当の役割について質問。「我々は完成作品だけ見ていると、あたかもそのものがそこにあるように感じるのですが、アニメの制作現場では、まず2Dで、“レイヤーでこういう組み合わせにしたら、それらしく見えるのではないか?”と、考えていくのが大事なのでしょうか?やはり演出のポジションの方が果たす役割は大きいのでしょうか?」と聞いた。
すると脇は「基本的にはそうじゃないでしょうか。レイアウトを描く段階で、アニメーターさんが今まで培ったフォーマットだったりとか、そういう土台があるので。ただ、その前に(演出や撮影監督、アニメーターで)打ち合わせというのがあって、『だいたいこういう素材が必要です』というのは自分から伝えています」と回答。「例えば『この煙とこの煙は別で描いてください』とか?」と具体的に聞くと、「そうですね。細かく言うと、なんで発生した煙かで3段に分けていたり。打ち合わせの流れがあって、『こういうものがあって』と伝えてやっていくと自然になっていく。それでも、上がってきた状態で足りなければ、自分の演出チェック時に足したりとかできるので。臨機応変に対応しています」。
「だから、演出の原さんの指示が的確でないと、打ち合わせで『こう進めよう!』と決めたのに、いざ上がってきたら『全然そういう素材じゃない…』ということもあるけれど。まあ、(演出は)なるべく事故がないように頭を使う部署でもありますね」と脇。これに原は「最終的に撮影さんの脇さんの方でなんとかしてもらおうって、おんぶに抱っこということもありますが(笑)。ないものを足してもらう…みたいな」と笑った。
さらに藤津が「常に連絡を取り合っているわけではないと思うのですが、脇さんは“素材を読む力”も必要なんでしょうか?この素材とこの素材はなぜ分かれているのか…とか」と質問すると、「そうですね。そこはアニメがアナログからデジタルに変わってもそんなに変わらないですね。絵の読み合い。(アニメーターの作画を見て)これはこういうつもりで描かれているからこの処理じゃ合わないな、とか。どうしても分からないところなどは、原さん、これどうなっているんですかね?と、1度指示を仰ぎます」と脇。
そこにすかさず、「今軽く言われていますけど、撮影さんのセンス的な話なんですよね。僕らは、こういう素材でこういう撮影をしたいというイメージを話すだけで、そのイメージになるべく近づけてくれるのが撮影さん」と原。「ライト一つにしてもすごくセンスのある撮影さんだと思っていて、そこは信頼をおいて素材を渡しています」と、演出と撮影監督の信頼関係について熱く語った。
続けて藤津は、「今回、暗闇の中から来るモビルスーツは手描きだったと思うのですが、本作のモビルスーツは3DCGも混在しているのですか?それは、CGに発注するときと、手描きのアニメーターさんに発注するとき、同じように見えてほしいというのはあると思うのですが、どのように発注するのですか?」と質問。これに原は「モビルスーツなどのディテールが複雑なものは、小さいサイズだと動画が荒れてしまう。省略作画という手法もあるのですが、昨今はクオリティを求められてしまうので、手描きではなく3Dという選択をしています。逆にアップの場合は作画。今回は、3Dと作画で違和感が出ないように、モビルスーツの影付けは気を使っています」と、こだわりの部分を明かし、「その辺は制作デスクの岩下さんが詳しいです」とバトンタッチした。
そこで岩下は「これまでサンライズがメーカーとして培ってきた部分は3Dに生かしていくということで。やはり影付けの部分は大分こだわってやりました。メカニカルデザインの玄馬宣彦さんに指示していただいて。簡単なことではないのですが、CG班がこだわってくれました」とコメント。「では、3DのCGと手描きのモビルスーツ、撮影で馴染ませるというのは考えましたか?」の質問には、脇が「考えたは考えたのですが。今回、劇場でご覧になれば分かると思うのですが、かなり上手くいっていると思います!」とアピール。「影付けの部分も含め、『え?これCGなの?作画なの?』って。どっちなの?って自分で作業しててもありましたから。『え?作画じゃないの?』って」と、その3Dのクオリティの高さにも胸を張った。
ちなみに、これらの内容をオンライン配信で楽しんだファンは「やっぱりアニメーション制作の人たちって職人だなあと思います」「本当に大変だと思います」「製作者さまサイドのお話をじっくり伺えるAnimeJapanって貴重な場だなと思いました」との声を寄せていた。
取材・文/平井あゆみ