【今週の☆☆☆】NYが舞台のクライム・アクション『21ブリッジ』、演技派女優共演の『アンモナイトの目覚め』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今週は、昨年急逝した『ブラックパンサー』のチャドウィック・ボーズマンの主演作、アカデミー賞常連のケイト・ウィンスレット、シアーシャ・ローナンが惹かれ合う女性同士を演じたヒューマンドラマ、美しき女性強盗犯とイノセントな少年が織り成すラブストーリーの、深い余韻を残す3本!
チャドウィック・ボーズマンの最後の本気を見逃すな!…『21ブリッジ』(公開中)
『ブラックパンサー』などのMCU作品でブレイクするも、2020年に43歳の若さで急逝したチャドウィック・ボーズマン。今年度アカデミー賞の主演男優賞の候補にも挙がり、その死を惜しむ声が絶えない彼の最後の主演作となったのが、このサスペンス・アクションだ。舞台はニューヨークの中心、マンッハッタン島。大量の麻薬を強奪し、警官隊を射殺して逃亡した凶悪犯を追い、正義感の強い刑事が街を駆ける。その過程で浮かび上がる、事件の驚くべき真相とは!?犯罪は決して見たままではなく、小さな犯罪の背後には往々にして巨悪がいる。そんな現代の複雑さを浮き彫りにする硬派なつくり。権力の腐敗を告発した、ボーズマン最後の本気を見逃すな!( ライター・有馬楽)
2人は愛を通して、孤独の中に埋もれていた自分を見出していく…『アンモナイトの目覚め』(公開中)
ケイト・ウィンスレットとシアーシャ・ローナン。世代も個性も違うけれど、誰もが認める演技派女優の2人が、繊細かつ濃密な愛の物語で初共演をはたした。舞台は1840年代、イギリス南西部の海辺の町。人嫌いの古生物学者メアリー・アニングと、裕福な化石収集家の妻シャーロットが、偶然の出会いから強く惹かれ合い、愛を通して、孤独の中に埋もれていた自分を見出していく。実在の人物にインスパイアされながら、ほぼオリジナルのドラマを構築し、長編監督デビュー作『ゴッズ・オウン・カントリー』(17)をどこか彷彿とさせる、完全に自分らしい作品に仕上げたフランシス・リーの手腕がすごい!言葉による説明は極力省き、目と目ですべてを語らせる演出にパワーがあるのは、ケイトとシアーシャの演技力があってこそ。抑制されたシーンと、互いの感情が激しくスパークするラブシーンとの対比も鮮やかだ。メアリ―が化石を探す浜辺の景色、波の音、シャーロットの香水の小瓶、手紙の残り香など、五感に訴えるさまざまなものたちがスクリーンから匂い立ってくる。(映画ライター・石塚圭子)
“夢の国”を目指す、孤独な少年と女銀行犯の逃避行…『ドリームランド』(公開中)
父に捨てられ喪失感を抱えた17歳の少年と、逃亡中の女銀行強盗犯。アメリカ中が不況にあえいだ1930年代半ば、偶然に出会ったふたりが“夢の国”メキシコをめざす本作は『俺たちに明日はない』に影響され書かれたという。しかし映画のテイストはおとぎ話のように儚げだ。その雰囲気を醸しているのが、少年の妹によるおだやかな口調のナレーション。本作は彼女の幼い頃の思い出話として構成され、ピュアな純愛物語は少女が頭の中で補完した「兄たちはこうあってほしかった」物語として観るとしっくりくる。それに拍車をかけているのが幻想的な映像群で、その美しさを味わうためだけでも観る価値はある。物語の舞台は、干ばつにあえぐテキサスの貧しい農村地帯。もの悲しい結末を迎える逃避行の終点で、涙のように静かに雨が降り注ぐさまもおとぎ話のラストにぴったりだ。(映画ライター・神武団四郎)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/サンクレイオ翼