庵野秀明総監督、「エヴァ」初の舞台挨拶に登壇!「直接お礼を言う最後のチャンス」ラストカットの裏話も披露
ミニチュアセットやモーションキャプチャーも使いながら、本作を完成させた。庵野総監督は「そういったものがなくても、アニメはできる。でも『:序』のころから、手で描いて済むだけのものにしたくないという思いがあった。いろいろな技術が上がって、ようやく今回それができた」と告白。「頭のなかでできた画面ではなくて、実際に存在するものを切り取ることで、アニメーションを作る。時間もお金もかかる。本当に大変なので、やらないほうがいいです」と続けると、緒方も大きな笑顔を見せる。
庵野総監督は「自分の頭のなかでできたものって、おもしろくない。自分だけで作りたくないんです。いろいろな人の意見を重ねて、やっていきたい」と熱弁しつつ、実写とアニメのハイブリットの手法を使ったことについて、「『:序』からちょっとずつそういったものを増やしながら、『:Q』と『シン・エヴァ』の間が空いて、その間に『シン・ゴジラ』ができたので、そのノウハウを全部生かせた。『シン・ゴジラ』を作っていなかったら、『シン・エヴァ』はこういうふうになっていない。あの映画をやらせていただいて、本当によかった」としみじみ。あらゆる積み重ねによって本作が完成し、「やっぱり進化はしたいのでね」とあふれる創作意欲を明らかにしていた。
また上映後のトークイベントとあって、緒方から「小ネタを教えてください」と聞かれるひと幕も。庵野総監督は「『エヴァ』の画面は、物語上で必要なものと、絵として美しいものと、僕自身の人生において関わりのあるものと、スタッフの好みで構成されている」と切りだし、「アニメーションって、自分の好きなものだけで構成できる。実写だと『あそこのビル、どうにかならないかな』ということもある。アニメならば描かなければいい。それができるのがアニメーションのいいところ」と吐露。
「そのなかには小ネタもいっぱいある。僕のなかでは宇部新川駅とか、クモハ42とか。モデルになっている駅の周辺は電化されていないので、電車があるのはそもそもおかしいんです。あれは僕が子どものころに見ていたり、乗っていた電車なので、思い出の場所として、あの画面が構成されている。クモハ42も僕の妻の絵も、大好きなもの。自分の人生にものすごく関わりのあるもの」と愛情を傾けるものをあげながら、「ラストカットの実写は、ものすごいお金をかけて、好きなものを一つ入れている。それは気づいていただけると幸いです」と笑顔を見せていた。
最後には「制作の途中からコロナ禍に見舞われて、日本中、世界中、大変な時期がいまも続いています。厳しい時期になっても、映画館に足を運んでいただけることに感謝しています。本当にありがとうございました!」とお礼を述べた庵野総監督。何度も観客に頭を下げ、その姿に会場からは万雷の拍手が贈られていた。
取材・文/成田 おり枝