品川ヒロシ監督が最新作『リスタート』を主演のEMILYと語り合う!クランクアップの瞬間、品川が流した涙のワケとは?
映画監督として、これまで『ドロップ』(08)、『漫才ギャング』(11)などの話題作を世に送りだしてきたお笑いコンビ、品川庄司の品川ヒロシ監督最新作『リスタート』(7月公開)が、4月17日(土)、18日(日)の2日間で開催される「島ぜんぶでおーきな祭 第13回沖縄国際映画祭」で特別招待作品として上映される。
本作は、シンガーソングライターを夢見て上京したものの、実際には売れない地下アイドル止まりの杉原未央(EMILY)が、人気ミュージシャンとのスキャンダルに巻き込まれSNSで炎上。傷つき疲れ果て、夢を諦めた未央は故郷である下川町に帰郷し、そこで暮らす家族やかつての同級生たち、下川町の大自然に触れることで次第に心を取り戻していく作品だ。
今回、本作を「特別な1本になった」と話す品川監督と、演技初挑戦ながら主演を務めたフォークデュオ「HONEBONE」のボーカル、EMILYに、撮影から2年の時を経て公開される本作への思いを訊いた。
「悔しがったり、なにかに怒っていたりする人が好きなんです」(品川)
ーー『リスタート』の主演にEMILYさんをキャスティングされた経緯を教えてください。
品川ヒロシ監督(以下、品川)「吉本興業から『下川町で映画を撮ってほしい』というお話をいただいたので、脚本を書くために、ロケハンも兼ねてシナリオハンティングに行ったんです。そこで挫折して田舎に帰ってきた主人公が、もう一度自分の夢に向き合う話がいいなと思ったのが始まりでした。主人公は女性のミュージシャンがいいなと考えながら東京に帰って来て、なんとなく録画してあった『家、ついて行ってイイですか?』を観たら、そこにEMILYが取材対象者として出ていたんです」
ーーそこでピンときたんですか?
品川「番組内で披露していた歌がすごく上手かったし、取材スタッフさんとのやりとりもおもしろかったので。気になってYouTubeでHONEBONEの曲を聴いてみたら、これもメチャクチャよくって!そのことをツイートしたら、まんまとEMILYがリツイートしてくれたんです(笑)」
EMILY「(笑)」
品川「そのあと、ダイレクトメッセージでやりとりして『映画に興味ある?』って誘いました」
EMILY「品川監督からメッセージをいただいた時、『チャンスには食らいつくぞ!』という気持ちで『なんでもやります!』と返事したんです。でも、きっと口約束だけで終わっちゃって、映画の企画なんて実現しないだろうなと思っていました」
「クランクアップで映画監督をしていて初めて泣いたんですよ」(品川)
ーー演技未経験のEMILYさんを主役にすることに不安はなかったですか?
品川「特に不安はなかったですね。感情をなにかに乗せて表現するという意味では、歌と芝居って本質的には似ていると思うんです。それに、脚本自体もほとんど当て書きというか、EMILYの現状に対する悔しさや怒りの感情を書いたつもりなので、演じやすいんじゃないかとも思っていました。僕自身、悔しがったり、なにかに怒っていたりする人が好きなんですよ。それがEMILYにはあった。そんな、いまのEMILYが抱えているグツグツとした感情をそのまま、脚本に落とし込んだんです。誰もが経験したことのある気持ちだとも思うので、観る人が共感できる作品になればいいな、という想いもありました」
ーーということは、監督にも“悔しさ”を感じる経験があったんですか?
品川「僕自身、主人公の未央みたいにドン底から這い上がるような思いをしたり、その状況をひっくり返すことで『最高のドン底じゃん!』と感じることが結構あるんです。だから、僕の思いも本作には込めてますね。本作の制作一つをとっても、クラウドファンディングでみんなの支援を受けてはいるものの、予算も少なく、夜通し撮影して、1日3時間ぐらいしかホテルに戻れない日があるほど、撮影スケジュールは本当にタイトでした。。でも、出演しているのがほとんど無名の役者ばかりだったこともあって、『この状況から、オレたちの力で這い上がっていこうぜ!』という、みんなの気持ちが作品の内容とリンクして、現場はすごく熱いムードでした。ラストの未央のライブシーンを見た時は、気持ちがリンクしすぎて『ああ、羽ばたいていっちゃうんだな』と思ったぐらいでした。まさか公開まで2年も空くとは思いませんでしたが(笑)」
EMILY「(笑)。確かに」
品川「そんな状況で、撮影終了直後は感情がグチャグチャになっていたので、あの熱い気持ちのまま作品が公開されていたら逆にヤバかったかも(笑)。僕、本作のクランクアップで映画監督をしていて初めて泣いたんですよ。もちろん、いままで撮った映画やドラマもすごく好きだし、それぞれに思い入れもあるんですけど、本作は特別な1本になりました」