2年越しの沖縄国際映画祭コンペティション!グランプリは現実と無意識が交錯する不思議なミステリー
沖縄国際映画祭のコンペティション「クリエイターズ・ファクトリー2020 U-25映像コンペティション」の審査会が、4月18日に沖縄・那覇市にある桜坂劇場で開催。グランプリに大河聡監督の『阿頼耶識』、審査員特別賞に西村翼監督の『Sea you again』が選ばれ、授賞式では両監督がリモート出演し受賞の喜びをコメントした。
同コンペティションは実写、アニメ、ドキュメンタリーなどジャンルは問わず、25歳以下の次世代を担う映像作家の発掘と支援を目指すもの。昨年は、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、急遽、最終選考会進出者の発表のみとなっていたため、延期されていた最終選考上映会は2年ぶりの開催となった。
グランプリ及び審査員特別賞の受賞者には制作費として総額100万円が贈られ、次回作制作のバックアップを受けることができる。前日17日には、2019年受賞者の新作も披露され、田中大貴監督の『PARALLEL』と西本達哉監督の『Be Here Now』が上映されていた。
今回、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、ノミネート作品の監督たちをリモートでつないで、審査員たちが質疑応答することとなった上映会。全6作品の上映後、最終審査のため審査員が一旦退席した会場では、前回受賞者の田中大貴監督、西本達哉監督をMCに、6人の監督がそれぞれの作品を講評するリモート座談会も行われた。
再び会場に審査員が集まり行われた授賞式で、映像プロデューサーの古賀俊輔がまず審査員特別賞を発表。誰もが共感できる、胸をくすぐるような男子高校生のひと夏の恋を描いた、西村監督の『Sea you again』が受賞し、西村監督は「観てもらえたことが最初うれしかったんですけど、賞をいただけて本当にうれしいです」と喜びをかみしめた。
映画作品2作目での受賞となった西村監督は、本作について自分自身と向き合って作品作りに挑んだと話し、「自分っぽい作品だけど、誰にでも共感できる部分があると思うので、そういったものが観た人の力になればいいなと思います」と作品に込めた思いを告白。さらに「自分が経験したことじゃないと描けないと思うので、この作品から2年経った新しい自分と会話しながら、自分らしさが出て、観る人を元気にするような作品を作っていきたいです」と今後の展望を語った。
続いて、審査員長の中江裕司監督がグランプリを発表。見事、大河聡監督の『阿頼耶識』が選ばれた。2年越しのグランプリに輝いた大河監督は「すみません、まさか(受賞するとは)思ってもいなかったのでコメントが…」と動揺した様子。一息ついた大河監督は「このような光栄な賞に選んでいただきありがとうございます。期待に応えられるように次回作もしっかりと作らせていただきます」と、感謝の言葉と次回作への意気込みを語った。
『阿頼耶識』は大学で出会ったメンバーと映画を学ぶ前に撮り始めたと話す大河監督は、「技術的には拙いところばかりですが、メンバー個々が持っている映画に対する“好きだ”という気持ちが形になり、ものすごく感無量です」と、仲間と共につかみ取った賞を喜んでいた。押井守やフェデリコ・フェリーニに影響を受けたという大河監督は、今作で、両監督の作品にも登場する“幻のヒロイン”を作品に落とし込んだと話し、次回作について「無意識、夢の中にいるような存在に振り回される物語を構想しています」と明かし、今作同様に不思議なテイストで描く作品を企画しているようだ。
最後に各審査員から講評があり、将来の映画界を支えていく監督たちにアドバイスとエールが送られた。中江監督はこれから次回作の制作が始まる大河監督、西村監督に課題を出しつつも、温かい指導の言葉で次世代の映画監督たちを祝福し締めくくった。
取材・文/角川アップリンク