アカデミー賞の次は“ニャカデミー賞”!映画ファンが熱視線を送る『映画大好きポンポさん』の魅力とは
ニャリウッド映画界の最高の栄誉・ニャカデミー賞に注目!
そんな本作のなかで、映画づくりのひとつのゴールとして登場するのが“ニャカデミー賞”だ。映画が完成した先に待ち受けているのは、観客からの忌憚のない評価と、作品とともに映画の歴史に刻まれていく栄誉にほかならないことは、現実の世界と同じだろう。
劇中に登場するニャカデミー賞の会場は、アカデミー賞の会場であるドルビーシアターにそっくりのデザインで、受賞発表直前の独特の緊張感も再現されている。撮影現場でポンポさんから言われる「まちがいなくニャカデミー賞獲っちゃうぜ」の言葉で、ジーンが一瞬にして大きなプレッシャーを感じてしまう描写からも、その賞の大きさが窺えるはずだ。
しかも『MEISTER』に出演する伝説の俳優マーティンは6度も受賞しているとのこと。ちなみにアカデミー賞での俳優部門の最多受賞者はキャサリン・ヘップバーンの4度で、ジャック・ニコルソンやメリル・ストリープら錚々たる大物でも3度まで。
圧倒的な佇まいにたまに茶目っ気たっぷりの表情を見せるマーティンと、ポンポさんの祖父であるペーターゼンのコンビは、ハリウッドの名コンビとして名高いロバート・デ・ニーロとマーティン・スコセッシ以上の大物ということだろう。
“編集”を主軸に映画制作を描く!玄人も唸るリアリズム
古くはフランソワ・トリュフォー監督の『映画に愛をこめて アメリカの夜』(73)や深作欣二監督の『蒲田行進曲』(82)、また最近では社会現象級のヒットを巻き起こした『カメラを止めるな!!』(17)など、映画づくりの舞台裏を描く作品のほとんどに共通していることは、誰もがイメージするであろう撮影現場での出来事にフォーカスを当てていることだ。しかし『映画大好きポンポさん』では、映画づくりに欠かせないものでありながら、この種の作品で見落とされてきた“編集”の過程に物語性を授けていく。
「映画を生かすも殺すも編集次第」。劇中のポンポさんの言葉に象徴されるように、映像作品のクオリティの大半は、編集にかかっているといっても過言ではない。それを示すように、本家アカデミー賞では編集賞が設立された第7回から前回の第92回までの85回のうち、編集賞と作品賞を同時に受賞した作品は34本。編集賞にノミネートされずに作品賞を受賞した作品はわずか10本しか存在していないのである。
撮影時以上に大きな決断を迫られることも少なくない編集作業は、映画づくりのなかでもっとも苦渋を伴うものともいえる。本作の劇中では、監督であるジーン自ら編集室にこもって『MEISTER』の編集作業を行なうのだが、自らの内面と向き合いながら編集で“切っていく”ジーンの姿にアニメーションならではの描写が活きており、コンピュータに向かう一見地味な作業をエモーショナルに見せている。
はたして、新人監督であるジーンは編集作業を乗り越えて映画を完成させ、ニャカデミー賞の舞台にたどり着くことができるのだろうか…。
本家アカデミー賞の後は、ニャカデミー賞を目指すポンポさんたちに注目してみてほしい!
文/久保田 和馬