浜口京子が語る、『いのちの停車場』で噛みしめた“両親への感謝”「誰かの優しさが人を強くする」
「私を信じてくれた父。バス停で迎えてくれた母…。いまの私があるのは両親のおかげ」
女子レスリングの元世界王者で、アテネ&北京五輪では銅メダルを獲得した浜口。劇中の若い二人は、様々な出会いによって将来の道を見つけていくが、浜口にとって人生の岐路で必ず背中を押してくれたのは「両親」だという。本作を観て、「両親の顔が思い浮かんだ」そうで、「世界を舞台に戦ってきましたが、私はよく両親に弱音を吐いていました。基本的にはおとなしい性格なので、闘争心丸出しで戦えるタイプでもない。そんなふうに弱かった私が、以前より強く、たくましく生きられるようになったのは、両親のおかげ」と明かす。
そもそもレスリングと出会えたのも、父親が彼女の秘めた想いに気づいてくれたからなのだという。「私はレスリングに出会う前に、空手、バレーボール、水泳など、いろいろなスポーツにチャレンジして。でもいくら頑張っても、表彰台には上がれませんでした。そこで発奮できず、挫折を味わっていました」と告白し、「水泳をやっていたころは、スピードの速い選手に囲まれているうちに、練習に行くことに後ろ向きになってしまって…。すると、父が私の様子がおかしいのをいち早く見抜いて、『京子、将来の話をしよう』と言ってくれました。何時間も話し合って、そこで私は心の奥底にあった『レスリングをやってみたい』という想いを打ち明けました。父は『大変だぞ。それでもやりたいのか』と。私の強い意志を聞いた父は、『じゃあ、明日から練習しよう』と私の想いを引っ張り上げてくれました」と父に感謝。
相手と真正面からぶつかり合う格闘技の道を邁進するうえでは、「つらい、苦しい」と思うこともたくさんあったという。「父のように強くなりたいと憧れて、チャレンジできた。そして父はいつでも『京子、お前は世界で一番強いんだぞ』とずっと励まし続けてくれました。私は自分に自信がない方ですが、父は私を信じてくれた。だからこそ私は戦い続けてこられたんです。父から学ぶことはたくさんあります」と続け、さらに「つらい練習の後や負けてしまった時など、いつも優しく、私を迎え入れてくれたのが母です」と母に対しても愛情があふれだす。
「本作では、咲和子先生が実家に戻られた時に、お父様が迎えてくれるシーンがありましたよね。またお父様の帰りを、母娘がバス停で待っている場面もありました。私にもバス停の思い出があるんですよ」と述懐。「私がレスリングを始めたばかりのころ、練習がつらくて泣いてばかりいました。汗で重たくなった練習着をリュックに入れて、バスに乗って家に帰るんですが、母はいつもそんな私をバス停で待ってくれていました。自転車のカゴにリュックを乗せてくれて、『今日はこんな技ができなかった』『苦しかったね』と話しながら帰ったことを、いまでも覚えています。バス停で母の姿が見えるとホッとしましたし、どんな状況でも待っていてくれる人がいるというのは、とても心強いもの。劇中で、咲和子先生を迎えるお父様の姿を見て、母とのバス停の思い出がよみがえってきました」と回顧し、涙を浮かべる。