【第93回アカデミー賞】監督賞は『ノマドランド』のクロエ・ジャオ!「信じる人たち、勇気がある人、善を守っている人たちに捧げたい」
現地時間4月25日(日本時間4月26日)に開催中の第93回アカデミー賞授賞式。監督賞は『ノマドランド』(公開中)のクロエ・ジャオ監督に輝いた。アジア系女性初の、アカデミー賞監督賞の獲得となった。
『ノマドランド』は、『スリー・ビルボード』(17)の製作会社サーチライト・ピクチャーズとフランシス・マクドーマンドが再タッグを組み、第77回ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞、第45回トロント国際映画祭で観客賞を受賞したロードムービー。ジェシカ・ブルーダーのノンフィクション「ノマド:漂流する高齢労働者たち」を原作に、企業の破綻と共に、長年住み慣れた住居も失ったファーン(マクドーマンド)が、“現代のノマド=遊牧民”として、季節労働の現場を渡り歩く姿をアメリカ西部の美しい大自然と共に描く。
プレゼンターを務めたのは、ポン・ジュノ監督。韓国からリモートで、受賞者を発表した。名前を呼ばれてステージに上がったジャオ監督は「『ノマドランド』の皆様、一生に一度の経験を一緒にできた」と感謝を伝え、「大変な時にどのように前進するか」は、子どものころに中国で父親と取り組んだゲームで学んだと明かす。「生まれつき人は善なるものだと、心から信じたい。どのような状況でも善があることを信じている。この賞を、信じる人たち、勇気がある人、善を守っている人たちに捧げたい」とメッセージを送っていた。
主演とプロデューサーを兼任したフランシス・マクドーマンドがジャオ監督の前作『ザ・ライダー』をトロント国際映画祭で鑑賞し、『クロエ・ジャオっていったい何者?』と深く感動したことが出合いにつながったという本作。本作でのクロエ・ジャオ監督との映画作りは「アメリカン・ドリームの一つ」とまで絶賛していた。
クロエ・ジャオ監督は1982年生まれ、中華人民共和国北京出身。北京とその後はイギリスのブライトンで育つ。アメリカ移住後、ニューヨーク大学で映画制作を学ぶ。『Songs My Brothers Taught Me』(15)で長編デビュー。長編2作目となる、カウボーイとして生きる青年を追った『ザ・ライダー』(17)は、第70回カンヌ国際映画祭で上映され、アート・シネマ賞を獲得した。マーベル・スタジオが贈る、最新ヒーロー超大作『エターナルズ』(21)の監督にも抜てきされている。『ノマドランド』では、第78回ゴールデン・グローブ賞でも、アジア系女性として史上初となる監督賞を受賞している。
文/成田おり枝