佐藤健×新田真剣佑の“感情”がぶつかり合う…『るろうに剣心 最終章』クライマックスシーンはこうして生まれた
頑丈な造りの物々しい門をくぐり、植生の真ん中を突っ切って石畳が敷かれた広大な庭を進んでいくと、近世中国建築風の大きな屋敷が姿を現す…。ただでさえ威圧を感じる景色だが、なによりも驚くべきは、ここがスタジオのなかだということだ。
成城学園前駅から徒歩15分、東宝スタジオの大きなステージを複数貸し切って行われる『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(『The Final』上映中、『The Beginning』6月4日公開)の撮影は、2019年3月末、いよいよ終盤戦に差し掛かろうとしていた。
明治維新後を舞台に、かつて“人斬り抜刀斎”として恐れられた緋村剣心とその仲間たちの死闘を描いてきた「るろうに剣心」シリーズ。志々雄真実が企てた日本転覆の計画を阻止するため、かつてない死闘を繰り広げた剣心達は、神谷道場で平和に暮らしていた。しかし、突如何者かによって東京中心部へ相次ぎ攻撃が開始され、剣心とその仲間の命に危険が及ぶ。はたして誰が、なんのために…。その謎の答えは、いままで明かされたことのない剣心の過去に大きく関係し、決して消えることのない十字傷の謎へとつながっていくのだった。
『The Final』本編のオープニングシーンを飾った、2018年12月の熊本ロケをはじめ、大友組がシーンに合った風景を探し求めたロケ地は、京都、奈良、滋賀、三重、広島など全国43か所にもおよぶ。クランクインから5か月を経てスタートしたのが、東宝スタジオでのクライマックスシーンの撮影だ。
スタジオ内に入った我々を待ち受けていたのが、主人公の緋村剣心役を演じる佐藤健だ。本作で5年ぶりに剣心を再演した佐藤は、近年では映画出演はもちろん、「義母と娘のブルース」や「恋はつづくよどこまでも」などのテレビドラマで、お茶の間で親しまれるキャラクターを演じることも増えてきた。
30代を迎え、そのような成熟した大人の役柄を演じている佐藤がはたして、純粋さの塊であるかのような緋村剣心をふたたび演じられるのか。正直に告白すると、記者は一抹の不安を抱いていた。しかし撮影現場で、役衣装に身を包んだ佐藤を目にした瞬間、その不安が杞憂に過ぎなかったことがはっきりと分かった。凛としたたたずまい、まっすぐな瞳のなかに見える一抹の寂しさ、流麗な身のこなし…どこを切り取っても、緋村剣心そのものだった。
その佐藤に本作で対峙するのが、雪代縁を演じる新田真剣祐だ。縁は剣心の十字傷の秘密を知り、武器や軍艦を送り込み志々雄真実を操っていた、中国大陸の裏社会を牛耳る武器商人。剣心に強烈な恨みを持って“人誅”と称する復讐を誓い、東京の街に砲弾で攻撃を仕掛けてくるという、かつてない難敵だ。これまでのシリーズに登場した、綾野剛が演じた外印、香川照之が演じた武田観柳、藤原竜也が演じた志々雄真実といった敵役と縁が異なるのは、彼は剣心にとっても忘れがたい“過去”を知る存在であり、心の傷となっている存在であるということだ。
シリーズ初参戦となった新田は、撮影に入る2年前にすでにオファーを受けていたのだという。その結果、肉体的にも精神的にも高いハードルが要求される縁役に、新田は万全の役作りを持って臨んでいた。大友啓史監督は新田を抜てきした決め手について、「縁という役に不可欠な、圧倒的な若さと凄味。そして、その底に潜む狂気のような純粋さと繊細さ」と表現しており、その言葉通り、現場での新田のたたずまいは、真っ白な髪色と黒いサングラスの下に秘めた縁の複雑な心情を見事に体現していた。