『スタンド・バイ・ミー』で一躍スターに…リヴァー・フェニックス、23年の刹那的な輝き
俳優活動を精力的にこなしていた矢先の1993年、23歳の若さで急逝したリヴァー・フェニックス。没後28年が経とうとしているが、その存在が胸に焼き付いている映画ファンは決して少なくない。それはひとえに、彼の出演した作品がいまも輝きを放っているから。
指名手配犯である両親からの巣立ちを演じてアカデミー賞助演男優賞にノミネートされた『旅立ちの時』(88)や、ストリートで体を売る孤独な男娼に扮した『マイ・プライベート・アイダホ』(91)での、青春期の複雑な心情の体現はフェニックスのナイーブな個性も手伝い、鮮烈な印象を残す。しかし、なんといっても『スタンド・バイ・ミー』(86)を抜きにして、フェニックスは語れないだろう。
モダンホラーの旗手、スティーヴン・キングの非恐怖小説に基づく本作は、主題歌となったベン・E・キングによる同名の名曲とともに愛されてきた。1950年代の米国の田舎町を舞台に、好奇心に駆られて、事故死したという少年の死体を探そうとする少年たち4人の、ひと夏の冒険の物語。
回想形式で語られるノスタルジックな雰囲気のなかに、少年たち各々が抱えている悩みや、それぞれに励まし合いながら先に進もうとする姿が浮き彫りになり、染み入るような感動を与えてくれる。
複雑な少年の心情を繊細に表現し、スターダムを駆け上がる
フェニックスが本作で演じた少年クリスは4人組のリーダー格。不幸な家庭で育ったためにワルぶってはいるが正義感は強く、友だち思いでケンカの仲裁にも入る。リーダーシップもあり、頼れる存在だ。フェニックスの繊細な個性はここでも生きる。とりわけ、親友に過去の事件で負った心の痛みを告白して涙ぐむ場面での好演は、強さの裏側に潜む人間の弱さが見えてきて、胸に迫るものがある。そんなキャラクターに観客は共感を抱き、フェニックスはスターダムを駆け上がった。