蛍舞う月夜、剣心と沖田総司が一騎打ち!『るろうに剣心 最終章 The Beginning』“夜”のアクションが生まれる現場 - 2ページ目|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
蛍舞う月夜、剣心と沖田総司が一騎打ち!『るろうに剣心 最終章 The Beginning』“夜”のアクションが生まれる現場

インタビュー

蛍舞う月夜、剣心と沖田総司が一騎打ち!『るろうに剣心 最終章 The Beginning』“夜”のアクションが生まれる現場

対する村上虹郎も、ひと目見て沖田役へのハマりっぷりがわかる。涼やかな目元と、よく通る声。これまでもこの「るろうの剣心」シリーズの配役には驚かされてきたが、沖田総司役もまた、ハッとするほどフレッシュな存在感を放っていた。

沖田総司役がはまり役な村上虹郎。大友監督は「生意気で大好きな若者」とにんまり
沖田総司役がはまり役な村上虹郎。大友監督は「生意気で大好きな若者」とにんまり[c]和月伸宏/集英社 [c]2020 「るろうに剣心」最終章 製作委員会

沖田総司のイメージカラーとも言える浅葱色の着物をまとった村上。動くたびに光沢のある白い羽織とハチマキが揺れる。互いに距離を詰めるたびに、足元からジリ…と砂利を踏む音がする。月明かりだけを頼りにした、ストイックなアクションシーンだ。実際には、暗闇に明かりをあてて暗部のディテールを見せていく。「るろうに剣心」シリーズの“夜”のアクションシーンが濃密なのはこのためだ。大友監督が「この時代の衣装の色は、どうしても黒に近くなってしまいますからね。夜の闇に沈んで細部のディテールが潰れないように、夜であっても、できるだけベースの明かりをしっかり作っています。そのためには潤沢な機材が必要ですけどね」と教えてくれた。

数回テストを重ねると、いざ本番だ。「せーの!」の掛け声でスタッフがワイヤーを引くと、驚くほどのスピードで近づいていく。切っ先が触れ合うほどギリギリの、危険なワイヤーアクションだ。剣豪の名にふさわしい、ためらいのない剣さばきを見せる佐藤と村上。


集中を途切れさせることなく、夜間におよぶ撮影に挑んだ
集中を途切れさせることなく、夜間におよぶ撮影に挑んだ[c]和月伸宏/集英社 [c]2020 「るろうに剣心」最終章 製作委員会

2人は雑談もそこそこに、現場で高め合うことだけに集中している様子だった。カットがかかるたび、タブレットで直前に撮影したシーンを映すと、大友監督とアクション監督の谷垣健治らと一緒におでこを寄せ合い、アクションプランを話し合う様子が見られた。

「緋村剣心というフィクションの登場人物が、歴史上実在した人物である沖田総司と戦うって、ロマンがあるじゃない?」と話してくれた大友監督。実はMOVIE WALKER PRESSで2012年、第1作『るろうに剣心』公開時に行ったインタビューで、佐藤健はアクションエンタテインメントの現場を経て、今後演じてみたい役柄は?と聞かれると「新撰組の沖田総司役」と答えていた。そんな沖田と緋村剣心との邂逅は、確かにロマンにあふれるものだった。

これまたはまり役の桂小五郎と剣心の師弟関係なども見どころだが、やはり『The Beginning』の魅力は、剣心が人を斬ることの正義に迷い、自分を憎んでいたはずの雪代巴と向き合い、本当の幸せを見出していくまでのドラマにある。

剣心が逆刃刀を手にするきっかけにもなる運命の女性、雪代巴(有村架純)
剣心が逆刃刀を手にするきっかけにもなる運命の女性、雪代巴(有村架純)[c]和月伸宏/集英社 [c]2020 「るろうに剣心」最終章 製作委員会

巴役を演じた有村架純について、大友監督は「『よーい、スタート』と声をかけた瞬間に、まったく違う顔になる。女優というのは、優れた器なんだと改めて思わせてくれる存在。感情を押し殺して抜刀斎に近づき、心を悟られまいとしながら接し、次第に心の距離感が近づいていくという、ひじょうに難しい役どころを繊細に演じてくれた」と称賛する。

「そんな巴のなかにうごめく細やかな感情を見つけ、それを守ろうとする若き剣心。シリーズのなかでも、この作品はまったく異なるテイストなので、小さな心の機微を大切に演じていかなければいけない。わずかな表情の変化や眼の動きでの感情表現は、アクションとはまた違ったやり甲斐があると思う。佐藤健と有村架純という2人の俳優は、それを見事に体現してくれた。大スクリーンで観てもらえれば、彼らの目の奥にある豊かな感情に、お客さんは気づいてくれるんじゃないかと思っています」。

悲恋とも呼べるドラマが描かれる
悲恋とも呼べるドラマが描かれる[c]和月伸宏/集英社 [c]2020 「るろうに剣心」最終章 製作委員会

アクロバティックで規格外なアクションで日本映画を更新してきた「るろうに剣心」だが、この『The Beginning』は、そんなアクションに匹敵するほど、“スクリーン映え”する作品なのだ。2年以上前の撮影当時、そう「大スクリーンの力を信じています」と力説してくれた大友監督。映画の力を信じ、走り続けた大友組の集大成を、ぜひ映画館で目撃してほしい。

取材・文/編集部

関連作品