「過去最大の仕事」とオスカー受賞デザイナーが自負する、クルエラのハイセンスすぎるファッションたち
ディズニーの名作アニメーション『101匹わんちゃん』(61)に登場する悪役クルエラ・ド・ヴィルの若かりし日に焦点を当てた実写映画『クルエラ』。現在、劇場公開に加え、Disney+のプレミアアクセスにて公開中である本作の見どころの一つが、作品を彩る華やかなファッションだ。
クルエラの誕生の裏側とは?
ディズニー史上最も過激と言っても過言ではない名ヴィラン、クルエラの誕生秘話をスタイリッシュな映像とともに描きだしていく本作。1970年代のロンドン、親を亡くした少女エステラは反骨精神と独創的な才能を武器に、ファッションデザイナーになろうと有名百貨店リバティに潜り込む。
デザイナーへの道を駆け上がるため切磋琢磨していくエステラは、ある日、伝説的なカリスマデザイナーのバロネス(エマ・トンプソン)の目に止まる。だが、彼女との関係が数々の出来事を引き起こし、のちにファッショナブルにして破壊的で復讐心に満ちたクルエラを生みだしてしまうことになる。
1970年代、ロンドンのパンクカルチャーがキーワード
クルエラのファッションデザイナーという設定上、衣装は本作で最も重要な要素の一つだ。物語の背景となる1970年代のロンドンといえばパンク旋風が吹き荒れ、社会、文化において、それまでの主流とそれに反抗するものがぶつかり合った時代。ファッションにおいても、ヴィヴィアン・ウェストウッドといったそれまでのメインストリームを覆すような、ユニークで独創的なデザイナーも現れた。
苦労が多いクルエラは、若い泥棒と意気投合しストリートを生き抜いていく、パンクを体現するキャラクター。劇中でもレザーのジャケットがクールな黒のワントーンスタイルや、馬や馬車のミニチュア、時計などがジャラジャラとつけられたド派手なナポレオンジャケットに特大のスカートを合わせるなど、独創的で尖りまくりなファッションを披露。その一方で、バロネスのファッションは気品にあふれたデザインや色使いのものが多く、ここにも対立構造を見て取ることができる。
2度のオスカー受賞を誇るジェニー・ビーヴァンの仕事
そんな本作の衣装を担当しているのが、ジェニー・ビーヴァン。『眺めのいい部屋』(86)と『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(15)で2度のアカデミー賞受賞がある彼女はロンドン出身で現在71歳、1970年代のパンクムーブメントの頃は20代で、時代を肌で感じてきた人物。
彼女は『クルエラ』のコスチュームを作り上げるため、デザイナーのほかにも、品物を調達するバイヤーやカットの専門家など、各ジャンルのエキスパートを招集。IMDbのCostume and Wardrobe Departmentの欄には62名ものスタッフの名が並んでいるから驚きだ。
「これは私がこれまでやった中で最も大きな仕事です。エマ・ストーンのために作った様相の量も、私がこれまでやったなかで最大でした」と語るように、それらのスタッフとともに47ものクルエラの衣装を用意。さらに「エマ・トンプソンの衣装も33ありました。ジョエル・フライやポール・ウォルター・ハウザーでさえ、それぞれ30の衣装がありましたよ」と、かつてないほどの仕事量だったことを明かしている。
重要な意味を持っているという点では、ファッション自体がキャラクターとして成立しているとも言える本作。もちろん単に華やかな服を見るという楽しみ方もできるので、ぜひチェックしてみてほしい。
文/サンクレイオ翼