「全裸監督」武正晴総監督が明かすロケ撮影へのこだわり「80年代なら猥雑な新宿、90年代は渋谷をメインに」

インタビュー

「全裸監督」武正晴総監督が明かすロケ撮影へのこだわり「80年代なら猥雑な新宿、90年代は渋谷をメインに」

映画やテレビドラマに撮影可能なロケ地の情報を提供し、案内、調整も行う組織「東京ロケーションボックス」は、映像作品を通して東京の魅力を国内外に発信しながら、ロケ撮影で地域活性化を図ることを目的としている。その活動内容の紹介として、実際にサポートを受けた作品にフォーカスするこの企画。今回は、Netflixオリジナルシリーズとして製作され、その大胆かつ衝撃的な内容で世界中のユーザーを魅了した大ヒットドラマ「全裸監督」のシーズン2をフィーチャー。

「全裸監督 シーズン2」の武監督と主演の山田孝之
「全裸監督 シーズン2」の武監督と主演の山田孝之「全裸監督 シーズン2」Netflixにて全世界独占配信中

シーズン1ではアダルトビデオ界の風雲児、村西とおるに主演の山田孝之が肉体改造してなりきり、“底辺”からの成り上がりを熱く活写したが、シーズン2では状況が一変。バブルが崩壊する1990年代を舞台に、「エロを空から降らせる」という衛星放送事業にいち早く乗りだすも失敗し、やがて時代から見捨てられていく村西の妄執と運命をドラマチックに映しだしていく。

そこで今回は、シーズン1に続いて総監督を務め、第1話、第4話、第7話、最終話となる第8話の演出を担当した武正晴監督を直撃!シーズン2の見どころやロケ地探しの苦労などをたっぷり語ってもらった。

【写真を見る】「全裸監督 シーズン2」総監督を務めた武正晴監督がロケ撮影への思いを語る!
【写真を見る】「全裸監督 シーズン2」総監督を務めた武正晴監督がロケ撮影への思いを語る!

変わりゆく90年代を描く!「実際の渋谷を撮る必要があるなと思ったんです」

村西がスゴいパワーとカリスマ性で周りの人々を巻き込み、上り詰めていったシーズン1はその熱量に圧倒されたが、シーズン2ではそれとはまた違うドラマチックな展開を見せる。そのことについて武監督は「前回はある意味助走で、村西や彼の周りに集まってくる人たちを紹介するイントロダクションだったけれど、今回はいよいよドラマが動きだすわけです」と強調する。

「メインの登場人物にそれぞれのクライマックスが用意されていて、物語の大きなうねりの中で凄まじい結末を迎えていく。黒木香やトシ、川田はもちろん、刑事の武井、ヤクザの古谷にまで主役級の芝居場があって、なかなか見応えがありますよ」

アダルトビデオ業界の頂点に立った村西と、彼のミューズ、黒木香
アダルトビデオ業界の頂点に立った村西と、彼のミューズ、黒木香「全裸監督 シーズン2」Netflixにて全世界独占配信中

メインの舞台が、前作の歌舞伎町を中心とした新宿から渋谷に移行しているのも今回の大きなポイントだ。「新宿のドロドロとした猥雑な雰囲気が似合う80年代と違い、90年代は渋谷だろうという話になって。だから、実際の渋谷を撮る必要があるなと思ったんです」と武監督は説明する。

「それに、スケジュールに追われたシーズン1の撮影後半では、現場をコントロールしやすいセット撮影に逃げ込みすぎた反省があったので、今回はどんどん外へ出て行ってロケーション撮影を多用しようという話をしていたんだけど…」。

そこで武監督は言葉を一瞬詰まらせ、一拍おいてから続けた。「東京オリンピックの影響もあると思うのですが、2020年以降の再開発で“当時”の渋谷がほとんど残ってなかった。しかも、30年ぐらい前は普通に撮影できた場所も全然許可が下りないんです」

シーズン2第1話の冒頭に登場する、村西が渋谷のスクランブル交差点の交番前で演説するシーンも、当初は新宿都庁前でのロケ―ション撮影を敢行する予定だったが、コロナの影響もあってイメージする規模での群衆シーンを撮影するにはロケーションを変更するしかなかった。

「でも、そこは逆手にとって、渋谷をテーマにするなら海外の人たちも知っているスクランブル交差点から始まるのもいいんじゃないか、という話になりました」と振り返る。ただし、実際の渋谷ではもちろん撮れないので、このくだりは中国映画『唐人街探偵 東京MISSION』(7月9日公開)の撮影のために建造され、Netflixオリジナルシリーズ「今際の国のアリス」でも使用された栃木県足利市のオープンセットで撮影された。

渋谷での撮影は90年代の雰囲気が残る東急ハンズやその向かいで行われた
渋谷での撮影は90年代の雰囲気が残る東急ハンズやその向かいで行われた[c]TLB


“あのころの渋谷”を求めてロケ…「昔の渋谷はもう残っていない」

渋谷で実際にロケをしたのは、村西のアダルトビデオ会社「サファイア映像」の建物の外観だ。「渋谷の東急ハンズとその向かいの建物だけは昔と変わっていないから、なんとか交渉してもらいました。看板や窓に映る映像はもちろん合成だし、室内もセットですけどね。渋谷で撮影できたのはあの一角ぐらい。川田が(新たなヒロインとなる)ミユキと初めて会うシーンもあの周辺の路地で撮りました」。

“実際の渋谷”の空気を伝えるために、渋谷道頓堀劇場界隈でも撮影。武監督は「僕は昔、あの辺りでバイトをしていたんだけど、あそこの路地はいまも雰囲気が変わってないから、古谷組のヤクザたちが歩いてくるシーンを撮ったんです」と解説するが、そこはどこにでもあるような路地。なぜそこにこだわったのか?

「いま残っている渋谷は撮っておいたほうがいいかなと思って。今回、渋谷をモチーフにして本当に良かったなと思いますが、昔の渋谷はもう残っていない。それだけに、あの路地には現在との落差をすごく感じましたね」

村西のアダルトビデオ会社「サファイア映像」の建物の外観として撮影。看板や窓に映る景色は合成映像で加工している
村西のアダルトビデオ会社「サファイア映像」の建物の外観として撮影。看板や窓に映る景色は合成映像で加工している[c]TLB

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