芳根京子主演『Arc アーク』役作りと世界観を支えるこだわり抜いた “衣装”の裏側を徹底解説!
芳根京子が一人の女性の17歳から100歳以上を生き抜くという難役を繊細かつ大胆に演じた『Arc アーク』(6月25日公開)。中身はどんどん年を取っていくリナを演じる芳根の役作り、そして石川慶監督が描きたかった“現在と地続きなSF”という世界観を支えた“衣裳”クリエイトの裏側が公開された。
『Arc アーク』の世界観を作り上げるポイントとしてまず挙がったのは、”本当によいデザインのものは、これから先もきっと残っているだろう”ということ。本作は近未来の物語だが、衣裳を新しくデザインして作ることはほとんどせず、国内外のブランドやヴィンテージアイテムなど、かき集めた衣裳の中からこの世界のフィルターを通して服を選びスタイリングしたという。
衣裳担当の高橋さやかは「見た目は同世代でも、実は何十歳も離れていたりして考え方も全く違うので、人々のファッションに対する流行やルールの感覚は薄くなっているのでは」とイメージを膨らませたそうだ。
外見は変わらないものの、リナが選びとり身につけるものは年齢を重ね精神が成長するにつれて変化していく。放浪生活を送る19歳のリナは”やさぐれた雰囲気”とイメージ。若い生命力が疼く感じを表現しつつ、それを序盤で印象づけるためにKapitalの自由で無国籍なデザインの黄色いパーカーをチョイスした。
30代になり”ボディーワークス”のアーティストとして成功を収め、会社の広告塔的な存在へと成長を遂げたリナは「子どもたちからも憧れられる華やかで凛とした人物」をイメージ。新作発表会のパーティーシーンではCNLZの洗練されたドレスをスタイリングした。
89歳で5歳の娘を持つリナは、素材感を重視して身につけるものを選び、品のよいナチュラルな服装に変化。経験や人柄が滲み出るような着こなしの表現を目指した。また、ヘアメイクに関しては芳根自ら「年代が上がるにつれて丸みを帯びた感じを表現したい」と提案し、30代までのキッチリと結われた髪型は年代が上がるにつれて、より自然体で優しい印象を与えるものになっている。
本作で重要な表現方法であるモノクロパートでは、モノクロで画面がのっぺりしてしまわぬよう、カラーの撮影では合わせないような色や柄の組み合わせに挑戦。素材によるカメラ映りにも重点をおき、モノクロになった時に映えるように工夫を凝らしている。実際に、89歳のリナが身につけている白衣は、カラーでみるとパープルに。計算し尽くされた衣裳にも注目だ。
外見が変わらぬまま年齢を重ねていくリナを見事に表現した芳根の演技力はもちろんだが、役作りの手助けとなったこだわりの衣裳とヘアメイクもじっくりと堪能したい。
文/タナカシノブ