若手映像クリエイターの登竜門「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」が今年も開催!2020年受賞作をスクリーンで観よう

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若手映像クリエイターの登竜門「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」が今年も開催!2020年受賞作をスクリーンで観よう

若手映像クリエイターの登竜門「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2021」が9月25日(土)~10月3日(日)に開催。今年18回目を迎える本開催に先駆け、2020年度の受賞作品を含む全24作品をスクリーン上映するプレイベントが7月4日(日)、10日(土)、11日(日)、17日(土)、18日(日)の5日間で行われる。昨年度はオンラインでの配信だった全作品が、本映画祭のメイン会場であるSKIPシティ映像ホールのスクリーンで鑑賞できるのは嬉しい限り。ずらりと並んだ上映予定作品のなかで、注目すべきはなんといっても受賞8作品だろう。

広く世界中から応募された作品を上映する国際コンペティション

世界各国からの長編作品を対象とする国際コンペティション部門では、マリア・セーダル監督によるノルウェーとスウェーデンの合作映画『願い』が最優秀作品賞を受賞。ガンを告知され余命いくばくもない女性を主人公に事実婚の夫婦が直面した試練を描いた本作について、審査委員長の澤田正道は「監督自身がこの主人公と寄り添って『生きる』ということを問いただしているように思えてきます」と総評。セーダル監督は「私の個人的な体験を映画作品にするのは非常にチャレンジングなことでした」と撮影を振り返っている。

国際コンペティション部門/監督賞、審査員特別賞『ザ・ペンシル』ナタリア・ナザロワ監督
国際コンペティション部門/監督賞、審査員特別賞『ザ・ペンシル』ナタリア・ナザロワ監督[c] Salt Studio, [c]Fortissimo Films

そして監督賞と審査員特別賞の2部門を制したのは、ロシアの社会構造を鋭く描くナタリア・ナザロワ監督による『ザ・ペンシル』。暴力におびえる生徒たちに芸術の素晴らしさを伝えようと奮闘する女性教師の生き様を追った人間ドラマだ。監督賞について審査員の三島有紀子は「本当に力強い作品で、ロシアの社会構造と、世界中に蔓延している『見たくないものを見ない』という気分を寓話として物語に落とし込めているというところが一番素晴らしかった」とコメントし、審査員特別賞について審査員のジュリアン・ロスは「この作品はロシアを含む世界各地が抱えている問題に鋭く焦点を当てている」と称賛。ナザロワ監督は「私の作品を高く評価していただき、本当にありがとうございます」と2冠に輝いたことへの驚きと感謝を語るとともに、日本へのリスペクトを表明した。

国際コンペティション部門/観客賞『南スーダンの闇と光』ベン・ローレンス監督
国際コンペティション部門/観客賞『南スーダンの闇と光』ベン・ローレンス監督[c] 2019 Hearts and Bones Films Pty Ltd, Spectrum Films Pty Ltd, Lemac Films (Australia) Pty Ltd, Create NSW and Screen Australia

また、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を抱える戦場カメラマンと南スーダン難民の男性の間に育まれる友情を描く、オーストラリア映画『南スーダンの闇と光』は観客賞を受賞。監督したベン・ローレンス監督は「映画祭、そして観客の皆さんに感謝いたします」とコメント。昨年度は本ドラマと同じく“戦場カメラマン”を主人公としたドキュメンタリー『戦場カメラマン ヤン・グラルップの記録』も出品されていて、もちろんプレイベントでも上映予定となっているので、ぜひこの機会に2作品を見比べてみてほしい。

若手の作品を厳選して上映する国内コンペティション

【写真を見る】圧巻のモノクローム映像でつづられたアンシュル・チョウハン監督作『コントラ』
【写真を見る】圧巻のモノクローム映像でつづられたアンシュル・チョウハン監督作『コントラ』[c] 2020 KOWATANDA FILMS. ALL RIGHTS RESERVED.

国内コンペティションは長編部門と短編部門の2部門で構成。そんななか優秀作品賞(長編部門)に輝いたのは、3月に劇場公開されたアンシュル・チョウハン監督作『コントラ』。モノクローム映像で撮られたこの作品は、第二次世界大戦中に記された祖父の日記を読んだことから宝探しを始める女子高生と、時空を逆走するため後ろ向きに歩くホームレス男性との不思議な交流を描く衝撃作。審査員のアダム・トレルは「エクスペリメンタルな映画でありながらエンターテインメント」と称し、チョウハン監督は「この映画は、自分の大切な部分を表現したものになっています」とその想いを語っている。

国内コンペティション部門/優秀作品賞(短編部門)『stay』藤田直哉監督
国内コンペティション部門/優秀作品賞(短編部門)『stay』藤田直哉監督[c] 東京藝術大学大学院映像研究科

一方、4 月に劇場公開された藤田直哉監督作『stay』は優秀作品賞(短編部門)を受賞。山奥の持ち主のいない古い空き家で共同生活を送る男女5人と、立ち退きを迫る役所から派遣された男の顛末を描く現代の寓話だ。沖田修一審査員は「長編にはない短編の良さが特にあったのではないかと感じたのが『stay』でした」と語り、藤田監督は「脚本、プロデューサー、撮影のメンバー、大学から長年やってきた仲間たちと撮った作品で賞が獲れて嬉しく思います」と仲間と分かち合う受賞に喜びもひとしお。

国内コンペティション部門/観客賞(長編部門)『コーンフレーク』磯部鉄平監督
国内コンペティション部門/観客賞(長編部門)『コーンフレーク』磯部鉄平監督[c] belly roll film

そして観客賞(長編部門)を受賞したのは、同棲7年目を迎えた男女が些細なきっかけですれ違う姿を描く、磯部鉄平監督による『コーンフレーク』。短編部門優秀作品賞作『予定は未定』(18)、SKIPシティアワード『ミは未来のミ』(19)に続いて本作で3年連続での獲得となる磯部監督は、「観客賞はお客さんが見て選んでいただく賞なのでとても嬉しいです」と語った。

国内コンペティション部門/観客賞(短編部門)『ムイト・プラゼール』朴正一監督
国内コンペティション部門/観客賞(短編部門)『ムイト・プラゼール』朴正一監督

同じく観客賞の短編部門では、昨年の本映画祭がワールド・プレミアとなった朴正一監督作『ムイト・プラゼール』が受賞。日系ブラジル人と日本人を隔てる言葉以上の壁の問題を丁寧に描いた朴監督は、「スタッフ・キャストのみんな、俺を救ってくれてありがとう。そして無理を聞いてくれた日系ブラジル人のみんな、あなたたちは全員才能があり素晴らしかったです」とほぼノーギャラだったスタッフとキャストへの感謝と、作品に関わった日系ブラジル人を応援するコメントを寄せた。

国際コンペティション、国内コンペティションを通じて国内作品を対象とするSKIPシティアワード

SKIPシティアワード『写真の女』串田壮史監督
SKIPシティアワード『写真の女』串田壮史監督[c] ピラミッドフィルム

このほかにも、今後の長編映画制作に可能性を感じる監督に対して贈られるSKIPシティアワードを受賞したのは、今年1月に劇場公開された串田壮史監督が手掛けた『写真の女』。写真屋を営む高度なレタッチ技術を持つ女性恐怖症の男性と、体に傷を持つ女性が織りなす異色のドラマだ。審査委員長の部谷京子は「独特の世界観を持つとてもユニークな作品で、89分間飽きることなく画面に集中していました」と高く評価し、串田監督は「自分自身もオンラインで映画を楽しんだのですが、映画の素晴らしさを再確認する機会となりました」というコメントとともに次回作への意欲をにじませた。


なお、海外作品の上映後には事前収録の監督インタビュー動画上映を、国内作品の上映後にはゲストによる Q&A セッションが予定されている。映画界に新風を吹かせる世界中の若手監督の作品を厳選する「SKIPシティ国際 Dシネマ映画祭」。その魅力を一足先にプレイベントで体感してみてはいかがだろうか。

■SKIP シティ国際 D シネマ映画祭2021プレイベント 概要
日程:7月4日(日)、10日(土)、11日(日)、17日(土)、18日(日)
会場:SKIPシティ映像ホール(埼玉県川口市上青木3-12-63 彩の国ビジュアルプラザ 4F)
料金:1作品600円
チケット:6月25日(金)10:00〜各上映日前日23:59まで
イベント特設サイト:https://www.skipcity-dcf.jp/pre-event.html
※本イベントは、今後の感染状況によっては開催を中止する場合があります。

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