試し読みも!和山やまワールド全開「夢中さ、きみに。」をドラマ&漫画から徹底解説

コラム

試し読みも!和山やまワールド全開「夢中さ、きみに。」をドラマ&漫画から徹底解説

「MIU404」演出家やブレイク必至の俳優たちが参加

そんな和山を一躍有名にした「夢中さ、きみに。」のドラマは2021年1月から毎日放送の「ドラマ特区」で放送された。一言では形容しがたい和山ワールドをドラマで表現するために、TBSで「グランメゾン東京」「MIU404」などのヒット作を手がけた塚原あゆ子が演出、映画『桐島、部活辞めるってよ』(12)『幕が上がる』(15)など青春ドラマに定評がある喜安浩平が脚本を務めるなど、実力派豪華スタッフが集結。さらには、人気急上昇中のジャニーズグループ、なにわ男子/関西ジャニーズJr.の大西流星が林、「仮面ライダーゼロワン」(テレビ朝日系)で主演を務め、「先生を消す方程式。」(テレビ朝日系)ではヒール役を熱演したことで注目を浴び、4月期ドラマ「着飾る恋には理由があって」(TBS系)において癒し系の後輩キャラを演じた高橋文哉が二階堂明役に抜擢された。

ほかにも『思い、思われ、ふり、ふられ』(20)で北村匠海や浜辺美波らとともに主演を務めた福本莉子が、ドラマにおいて重要な役割を果たすお嬢様女子高に通う松屋めぐみを、帰国子女で非凡な才能を発揮し、『ハニーレモンソーダ』(公開中)で明るいキャラクターを演じた一方、現在放送中のドラマ「にぶんのいち夫婦」(テレビ東京)ではヒロインに不倫を持ちかける色気ある男性を演じている坂東龍汰が、なにかと二階堂を気にかけ絡むようになっていく目高優一を、ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(カンテレ・フジテレビ系)に登場し、カツセマサヒコによる小説を映画化した『明け方の若者たち』(2022年公開)にも出演が決まっている楽駆が江間譲二を演じるなど、益々のブレイクが期待される若手俳優たちが勢揃いしている。

『思い、思われ、ふり、ふられ』(20)など話題作への出演が続く福本莉子が、重要な役割を果たす松屋めぐみ役を好演
『思い、思われ、ふり、ふられ』(20)など話題作への出演が続く福本莉子が、重要な役割を果たす松屋めぐみ役を好演画像は映画『思い、思われ、ふり、ふられ』(@furifura_movie)公式Instagramのスクリーンショット

構成としては二階堂と林を2軸に、彼らを取り巻く高校生の日常が1話完結で描かれるところは原作と変わりない。だが林とめぐみの交流を描いた物語を冒頭に持ってきたことで、恋愛感情とも単なる興味とも言い難い、高校生の「相手のことをもっと知りたい」「友達になりたい」という純粋な気持ちが淡い映像とともに映し出され、和山ワールドに青春の甘酸っぱさがプラスされた。

一方、二階堂のターンになると映像はトーンダウン。「伊藤潤二の漫画に出てきたよね?」と目高に言われる二階堂の不気味さが、ホラー映画のような映像で表現されている。例えば3話の後半部分は来たる二階堂たちの修学旅行が、まるで本当に怖〜い話が始まるかのように“予告編化”された。

そして、なによりドラマオリジナルの見どころは、原作では別々に描かれた二階堂と林の世界線がこの修学旅行をきっかけに交わるところだ。普段はそれぞれの人生を送っている10代の若者が交差点で出会い、さらにはドラマオリジナルのキャラクターも登場し、物語は騒がしくなっていく。1つ、林が1話で語る台詞を紹介したい。

「心に余裕があるうちは意味のないことをしていたいんです」

おそらく、本作の魅力はこの台詞に凝縮されている。人生の役には立たないかもしれないことに没頭したり、誰かを観察したり、追いかけたり…大人からしてみれば一見意味のないことが学生時代には楽しくて仕方がない。ドラマ「夢中さ、きみに。」は原作の独特な世界観を実写に落とし込みながら、そんな青春を送る彼らをずっと見ていたくなるような中毒性のある仕上がりとなっていた。

さらに、Blu-ray&DVDには若手のキャストたちがドラマを作り上げる過程を映した青春感満載のメイキングも特典として付属されるので、ぜひ手にとってほしい。淡々としていながらも和山のセンスが光る台詞に腹筋が鍛えられる原作、そんな原作をリスペクトしながら微笑ましい青春群像劇として描いたドラマ版。原作を読んでからでも、ドラマ版を観てから原作を読んでも、その違いを楽しめるはずだ。

文/苫とり子

■「うしろの二階堂」の試し読みはこちら

■「ファミレス行こ。」
「カラオケ行こ!」の続編。月刊コミックビームで不定期連載中。
掲載情報は和山やま公式Twitter(@YamaWayama_PR)、コミックビーム公式(@COMIC_BEAM)を参照。
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