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父子のドラマだけでなく、散りばめられたメタファーの考察も…『バケモノの子』は多面的に楽しめる作品だ

コラム

父子のドラマだけでなく、散りばめられたメタファーの考察も…『バケモノの子』は多面的に楽しめる作品だ

「クジラ」が意味することとは?メタファーについて考えるのも楽しみの一つ

バケモノの子』は公開当時、多くのメタファー(=隠喩)が含まれていることで、SNS界隈を賑わせた映画でもある。九太や一郎彦の胸に空いた穴、そこに宿る(人間だけが心に宿すという)闇はなにを表しているのか?熊徹が言う「胸の中の剣」の意味、謎の生き物、チコの正体とは…。劇中では説明されなかったいくつも事象について、ファンは自由に解釈や考察を繰り広げた。

バケモノ界では人間を弟子にすることはご法度だった
バケモノ界では人間を弟子にすることはご法度だった[c]2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS

また、細田監督の作品には毎回「クジラ」のモチーフが登場しているが、本作では九太に立ちはだかる強大な“敵”として重要な役割を果たしている。『サマーウォーズ』(09)ではインターネット空間「OZ」の守り主、『おおかみこどもの雨と雪』では雪が持っている児童書の表紙――しかも背表紙が映るだけという超難問クイズのような扱いだっただけに、『バケモノの子』で重要キャラに抜擢されたことを興味深く捉えるファンも多かったようだ(九太が渋谷の図書館で最初に手に取る本も「白鯨」である)。

細田守作品におけるメタファーの常連とも言える、「クジラ」が意味することとは?
細田守作品におけるメタファーの常連とも言える、「クジラ」が意味することとは?[c]2015 THE BOY AND THE BEAST FILM PARTNERS

これらのメタファーやモチーフに細田監督がどんな意味を込めたのか、思い巡らせてみるのも本作の楽しみ方の一つ。もちろん、このほかにも意味ありげなセリフやアイテムはあるし、もう一つの細田作品のモチーフである「桃」もしっかり登場しているので、気になる人は探してみてほしい。観るたびにきっと新しい発見があるはずだ。


7月16日(金)から全国公開される細田守監督の最新作『竜とそばかすの姫』でも、予告映像の中ですでにクジラのような姿が確認されている。50億人以上が集うインターネット空間を悠然と泳ぐクジラは、映画の中でどのような役割を担っているのか?映画館のスクリーンで、ぜひ確かめたい。

文/ほそいちえ

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