『竜とそばかすの姫』の“歌姫”を務めた中村佳穂のバイタリティ「ここからおもしろいことが確実に起きていく!」
「自分が変わっていくことを否定しないように気をつけています」
また、すずに共感できたことを尋ねると、「表現というものは優しさがなくても成立しますが、そこに優しさが入ると、さらに輝くと私は思っています。優しさというのは、『こうすればいいんだよ』といった助言を与えるという意味ではなく、なにも言わず陰でサポートするいうか。例えばヒロちゃんなど、裏方に回ってくれる人の支えがあってこそ、さらにいい表現ができるようになるという感じ。最後にすずがあんなふうに歌を歌えたのは、誰かがただ寄り添ってくれた感じがしたからで、いまの自分とも通じた感じがしました」。
ミュージシャンとして9年の歳月を重ねてきた中村は「今回のように、自分では気づかずに変わってきた点もあるとは思いますが、変わっていくことを否定しないように気をつけています。『私とはこうだから』と決めつけてしまうと、かえって私らしくなくなってしまうから。自分が受けられないと思ったことはキッパリとやらないけど、いつもと違うものでも、ピンときたら受け入れていこうという気持ちでいます。どこかで始めたての私でありたいなといつも思ってます 」。
最後に、本作で受け取ってほしいメッセージについて聞くと「映画を観た人が、その時に感じたことがすべてだと思います。でも、音楽もそうですが、耳をふさいでいると聴けない。まずは劇場に来ていただけたらうれしいです。あとは目や耳を開いて、すべてを観て聴いてもらい、楽しんでもらえたらと。そして観たあと、なにかの活力になってもらえればと祈りながら、いま船を押し進めている気持ちです」。
自分で音や詩を紡ぎだす中村の、アーティストならではの感性によって息を吹き込まれた言葉や歌は、細田監督の言う“唯一無二”という表現がとてもしっくり来る。ぜひ大スクリーンで、体感していただきたい。
取材・文/山崎伸子