『竜とそばかすの姫』の“歌姫”を務めた中村佳穂のバイタリティ「ここからおもしろいことが確実に起きていく!」
「細田監督は“一緒にすずを探してくれる”という感覚の方でした」
今回、声優初挑戦となった中村だが、そのクオリティの高さにうなるほど、すず役がマッチしていた。中村自身は演じたすず役をどう受け止め、どのようにアプローチをしていったのだろうか。
「すずはしっかり内気で、しっかりわがままなところがある点が主人公らしいなと思いました。あんなに優しい人たちに幼少期から囲まれてきたのに、母を亡くして以降自分は不幸だと1人で悩んできたので。でもそこが、みんなに愛されてきた証拠でもあるのかなと。歌をすごく真剣に作るという点は自分と似たところだと思いますが、いい意味で私と違うところも多かったです。だから私も、彼女に優しくする一人としてすずに接しようと思い、『頑張ってね』と、すずが幸せになれるよう手伝っていくような気持ちで臨みました」。
細田監督の演出については「“一緒にすずを探してくれる”という感覚の方でした。アフレコの初日でも、『すずはこんなことはしないよ』とかは一切おっしゃらなくて、『こういう時、すずは心のなかでこんなふうに考えてたりするんだけど』と、ご自身の描いたストーリーを読み聞かせてくれる感じで。あとは私の好きなように演じさせてもらいました。きっと細田監督に上手く乗せていただいたんじゃないかと。相手を引き立ててくれる、本当にすてきな監督だと思いました」。
インターネット上の仮想世界<U>については「全世界で50億人のアカウントがいるから、なにが起きてもおかしくない世界だし、いまの現代に通じるような世界だなと思いました」と述べる。
ちなみにネット上での誹謗中傷が社会問題化している昨今だが、中村自身は心無いアンチのコメントを気にすることもあるのだろうか?
「舞台に上がっちゃうと完全に忘れますが、けっこう気にするタイプです。実は細田監督に初めてお会いした時、なにか1つ質問をしようと思い、そこで『エゴサーチってしますか?』と尋ねたんです。きっと音楽だけではなく映画にも賛否両論があるはずだと思ったので『監督は気にされますか?』と聞いたことがあって。そしたら細田監督から『君は本当にすばらしいから、そんなものは絶対に気にしちゃダメです』と言われたことがすごく印象に残っています。この映画を観た時も、なにかしらそういうメッセージをもらえたような気がして。ふっと肩の荷が下りたというか、前より少し気にならなくなったと思います」。
とはいえ、ライブでは歌う前に周りの状況をしっかり感じ取ってから歌うそう。
「なにもかも無視して独りよがりに歌ってしまうと、人の心を射ることはできない気がするんです。だからライブでは、歌を歌う前に、ライブに来ている方々をスケッチしたりして、どういう雰囲気なのかを見てから歌うようにしています。そうしないと、その日に一番似合う歌が歌えない気がするので。でも、そういうバランスが、この映画を観てから少し変わった感じがするんです」。