玉城ティナ「女優業は正解がないところも含めておもしろい」『竜とそばかすの姫』で声優にも初挑戦
「女優業には正解がないし、満足しきることはできないけど、そこも含めておもしろいです」
<U>のキャッチコピーに「現実はやり直せない。しかし、Uならやり直せる。もう1人のあなたを生きよう」とあるが、玉城は「この言葉に惹かれる方はたくさんいると思うし、私自身もいままでやってきたなかで後悔がないといったら嘘になりますが…」と前置きをしたうえで、「きっと仮想世界に行っても、自分の人生までは変えられないんじゃないかと。つまり、現実の世界でつまずいたことは、仮想世界でも上手くいかないんじゃないかとも思います。やっぱり場所を変えても、人の性格までは変わらないから」と冷静に受け止めている。
「例えば、最初にすずがベルという<As>を手に入れた時、容姿の美しさについても描かれますが、中身はもともと彼女自身がが持っていた魅力だったわけです。結局どこに行ったとしても、自分のことを認められないと、人生を変えることなんてできない、というのが本作のメッセージの一つでもあるのかなと」。
さらに細田ワールドの魅力について「夢物語すぎない点」を挙げる。
「私はアニメ―ション作品の物語には夢があったほうがいいと思っていますが、やりすぎてしまうと身近に感じられないんです。でも、細田監督作品は、インターネット上の世界を描いても、ちゃんと現実に還元してくれる感覚があります。例えば『竜とそばかすの姫』でも、“そばかすの姫”という設定が、ちゃんとリアルに落とし込まれていて、自分の人生をないがしろにしていないところがすてきです。だから映画を観て、自分も現実を頑張って生きようかなと思えました」。
『竜とそばかすの姫』のあとは、オダギリジョー演出・脚本のドラマ「オリバーな犬、(Gosh!!) このヤロウ」も待機中の玉城。作品選びについては「出会いだと思っています」とキッパリ言う。
「私がこれをやりたい!と思うキャラクターや原作があったとしても、それが映像化の企画としてどう動くかもわからないから、半分くらいは受け身の姿勢でいます。それよりも、自分が思う私のイメージみたいなものを、プロデューサーさんや監督さんに広げてもらうことのほうが楽しいし、発見がたくさんあるので。人が『私らしい』と思う作品も、100人いたら100通りあるだろうから、自分で『私らしいもの』とあまり決めつけないようにして、いろいろな役柄に挑戦できたらと思っています」。
また「女優業には正解がないというか…。場数を踏んでいっても、正解に近づくというふうには思えないし、満足しきることはできない仕事だけど、そこも含めておもしろいです」と女優業へのやりがいは増すばかりのよう。
最後に、完成した作品の感想を聞くと「細田監督のいままでの作品とはまた違う、新しい映画だなと思い、2時間没頭できました」と興奮気味に語り、映画館で観て欲しい、と力強く語る。
「竜に対してベルが『あなたは誰?』という言葉をかけるんですが、それがなんとなく自分にも問いかけられているような気がして、自分である意味みたいなものもすごく考えました。王道のラブストーリーもあるのですが、コンプレックスを乗り越えるという成長物語でもあるし、友情や家族の絆も描かれるし、衣装や音楽もすばらしい。いろんな要素が盛りだくさんですが、とにかく『劇場で観てほしい』と言いたいです。映画を観たら、自分がいた場所から少し違う場所に行けるような、自分の可能性を改めて信じることができる作品になっていると思います」。
取材・文/山崎伸子