信長役も、ブッダ役も。“サプライズ”な配役を楽しむ染谷将太が『竜とそばかすの姫』から受け取ったもの
「普段はエゴサーチをしませんが、敢えてする時もあります」
インターネット上の仮想世界<U>の映像を目にした時、染谷は「没入感がすごかったです」と息を呑んだとか。
「あの映像は、絵コンテからも想像がつかなかったです。すごく抽象的なんですが、ものすごく入り込んでしまうようなデザインで、エモーショナルかつ美しくて…。ずっと見ていられる世界観でした。僕自身は機械に弱い人間ですが、今回描かれているものは、未来の社会において避けては通れない世界だと思うので、興味がそそられましたし、ワクワクもしました」。
SNSなどに積極的ではない印象がある染谷だが、エゴサーチなどはするのか?と尋ねると「時々します。例えば、大河ドラマで信長役を演じていたころはよくやっていました(笑)」と答えてくれた。
「最初は『なんであいつが信長なんだ!』というコメントをあえて見たくて、実際に見てみたら、そういう意見がいっぱいありました。特に登場したての信長は、単なるニコニコした青年だったので『なんだ、あの信長は?』というものが多かったです。でも、当時はそうやって叩かれること、違和感を与えること自体、ちょっとした安心材料になっていたんです」。
結果として、回を重ねていくごとに、染谷が演じたこれまでにない信長像は大いに反響を呼び、ドラマを牽引する重要な役どころとなった。
「製作チームの狙いどおりでした。『麒麟がくる』では池端(俊策)先生の脚本やスタッフを含めて皆さんのクリエイティビティは本当にすごかったです。僕としてはただ、脚本に書かれたことをそのままやっただけなんですが」。
もちろんネットの評価には常に賛否両論がつきものだ。“否”のコメントについて、染谷は「人間性そのものを否定されるようなことを書かれたら傷つくかもしれないですけど、自分がやった仕事に対しての評価であれば別にいいです。そういう生の意見はなかなか聞けるものではないですし、そこは全然大丈夫。評価をしてもらうこと自体、うれしいですし。でも、普段はそんなにエゴサーチはしないです」とのこと。
「僕は毎回細田監督の映画を観ると、自分自身が許される感じがします。『完璧な人間なんていないから、そのままでいいよ』と肯定されているような。本作では親子の絆や主人公の成長が描かれていますが、やっぱり今回も僕は自分が認められて、背中を押された気持ちになりました。それは、人が成長していくうえですごく重要な要素の一つなんじゃないかと僕は思います」と、『竜のそばかすの姫』から受け取ったものについて話してくれた。