信長役も、ブッダ役も。“サプライズ”な配役を楽しむ染谷将太が『竜とそばかすの姫』から受け取ったもの
「自分の想像がつかない角度からいただく役が多いです」
中国で爆発的ヒットとなり、現在日本でも公開中のチェン・スーチェン監督作『唐人街探偵 東京MISSION』では、指名手配犯である村田昭役で静謐な狂気を見せている染谷。Netflixなどの配信作品が世界各国で観られるようになったいま、映画作りはどんどんボーダーレスになってきている。
「家にいながらいろんな国の作品を観られるようになったのは、自分のなかでも大きな変化でした。でも、俳優の仕事は基本的に現場でやる仕事で、そこに行かないと始まらないので、僕自身はそこにボーダーを感じています。例えば中国へ撮影に行く時もボーダーをまたいでいる気がするし、日本で中国映画の撮影をする時にもなにかしらのボーダーは感じます。でも、完成した映画そのものには、ボーダーがないと思えるんです」。
それは中国の巨匠、チェン・カイコー監督作『空海―KU-KAI― 美しき王妃の謎』で日本人俳優として、タイトルロールを務めた染谷ならではの感想だ。
「ボーダーがないものを作るには、いまのところボーダーを超えなければいけない、と思っています。だからこそもっともっと僕たちは頑張らなければいけないということです」。
また「これから先、自分の頭じゃ想像がつかない<U>みたいな世界ができて、実際に現地へ行かなくてもパフォーマンスができるような世の中になるのかもしれない。いまでも日本に来られない海外の監督がZOOMで中継して、日本のクルーと役者を使って海外作品を撮ったりもしている。今後、どんどん形は変わっていくんだろうなとは思っていますが」と柔軟に捉えている。
今年で29歳となる染谷だが、迎える30代からの展望とは?
「僕は子どものころからこの仕事をしてきて、ずっとなにも変わってないので、展望と言っても、『これから先も変わらなかったらいいかな』と思うくらいです。もちろん歳を重ねていけば演じる役柄も変わってくるとは思いますし、30歳を超えたからこそできる役もやりたいとは思いますが。逆に、あとから振り返ったら、『10代だから、20代だからこそ出来た役柄だったんだな』と思うのかもしれませんね。(園子温監督作)『ヒミズ』のような役は、あの年齢だったからこそできた役だと思うので、今後もそんなふうに思えるような作品と出会えたらうれしいです」。
さらに「僕からこういう役をやりたいと言い出すことはあまりないのですが、それはきっと、自分の想像がつかない角度から役をいただくことが多いからではないかと」と述懐。
「空海も、(『聖☆おにいさん』シリーズで演じた)ブッダも、信長もそうです。まさか自分がやるとは思わなかった役ばかり。そりゃ空海のことは好きですけど、『空海を演じたい!』なんて、自然には思いつきませんから(笑)。だから、細田監督の作品で声優としていただく役もしかり、毎回サプライズなんです。今後もそうやって、楽しんでいきたいです」。
取材・文/山崎伸子