各界の著名人たちも絶賛!『サイダーのように言葉が湧き上がる』に集まったコメントをピックアップ
幅広い世代の心を打つ「俳句」を使った言葉の表現
劇中でチェリーが詠む俳句についても、その言葉選びや心情表現は見どころの一つだ。俳人としても活躍する梅沢富美男さんも本作を鑑賞しており、「僕みたいなジジィの見る映画じゃないと思ってた。僕みたいなじじぃが不覚にもキュンとしてしまった。俳句は五七五、たった十七音が万の言葉を尽くすより多くのことを伝える事を知ったのは僕が60才過ぎてからでした。もっと早く知っていたらチェリーやスマイルのように輝く青春があったかも知れない。この映画の間僕は17歳に戻っていました。あの頃の僕に伝えたい、『雷鳴や伝えるためにこそ言葉』。透き通ってシュワシュワと甘酸っぱい。誰もが知っているあの感じ。今の自分に重ねるもよし、遠いおもいでに浸るもよし」と語っている。
一方、クイズ番組「東大王」に出演する東大生の岡本沙紀さんは、「“盛れ”“映え”の次には“エモ”が流行る、と言われる中で、日常にひそむささやかな“かわいい”を写真や文章に残したいと考えている人は増えていると思います。ポップな色づかいとコミカルで躍動的な映像で描かれる俳句の“エモ”さと青春のまぶしさを、日々の景色、普段使うことばを大切に生きたいと思ったことのある全ての人とシェアしたくなりました」とコメント。
同じく東大生の紀野紗良さんも「言葉を声に出して伝えることの大切さを再認識させられる映画でした。SNSが普及し、どうしてもテキストで想いを伝えることが多くなっています。そんな中、想いを口に出したら?そしてそれが俳句だったら?本心がより魅力的に伝わるのではないでしょうか。俳句に込められた登場人物のメッセージに心打たれました」とコメントするなど、俳句の魅力が本作を通し、幅広い世代に伝わっていることがわかる。
物語を彩る様々な音楽
中盤から本作は、バイト先で出会った老人、フジヤマ(声:山寺宏一)が失くしてしまった想い出のレコードを探すため、チェリーとスマイルが仲間たちと奔走する姿も描かれる。この想い出の曲「YAMAZAKURA」を大貫妙子が歌うほか、主題歌「サイダーのように言葉が湧き上がる」を、ポップなメロディが特徴のバンド、never young beachが担当。イシグロ監督たっての希望で、劇伴を映画『聲の形』(16)や『リズと青い鳥』(18)などで知られる電子音楽家の牛尾憲輔が務めている。
豪華な布陣となった音楽面についても、スチャダラパーのBoseが「地方のショッピングモール、夏の夕方、遠くに積乱雲、シャイな主人公にコンプレックス少女、主題歌はネバヤン、劇中歌は大貫妙子さん、音楽は牛尾憲輔。なんだこれは!俺得な要素ばかりじゃないか!」と絶賛するなど、琴線に触れるところが多い。
少年少女の淡い青春ストーリーに独創的な映像表現、俳句や音楽によるアンサンブルなど大勢の心に響く作品となった『サイダーのように言葉が湧き上がる』。夏に飲む冷たいサイダーのように、爽やかな気持ちにさせてくれる本作を、ぜひスクリーンで味わってみてほしい。
構成・文/サンクレイオ翼