音楽クリエイター、ヒャダインが語る“新生スーサイド・スクワッド”の痛快さ「大笑いして、とにかくスカッとできる映画!」
「“ヒーロー補正”をあえて皮肉っているようなところがある」
脚本家としても高い評価を得ているガン監督は、今作でも脚本を兼任。お約束どおりに展開しない意外性は、彼の作品に共通するスタイルだ。「“ヒーロー補正”という言葉があります。ヒーローが生き残ることを前提にした予定調和のことですが、この映画にはその“補正”がない。それどころか、“ヒーロー補正”をあえて皮肉っているようなところもありますね。また、CGを使った映像はとても精密で、ハーレイ・クインがすごいジャンプを見せるところもドヤ顔をせず、さらりと自然に見せている。一方で、ブラッドスポートのガジェットが無駄にかっこよすぎたり、全員が横並びで歩いてくるキメカットのバランスがバラバラだったり、ステータスの振り方がめちゃくちゃ(笑)。最近のヒーロー映画は観る側に考えさせる、シリアスな傾向にあるように感じますが、予定調和に対するアンチテーゼや、ガン監督の気概をすごく感じました」。
「行っていることは無慈悲でも、ファンタジーとして楽しめる映像」
悪党チームの活躍だけに過激なアクションも見どころ。バイオレンスな描写もあるが、それらもガン監督ならではの“映える”見せ場になっている。「例えばハーレイ・クインがジャベリン(=槍)を使い始めると、彼女の背後から美しい花がバーっと舞い飛び、映画というよりアニメーションやゲームの感覚に近い世界観。普通だったら花はなにかのメタファーだったりしますが、たぶん“キレイだから”というだけの理由で使ったんじゃないでしょうか(笑)。だからバトルシーンも『戦国無双』や『Ghost of Tsushima』みたいに敵をバサバサ斬り倒していくゲーム感覚で、行っていることは無慈悲でも、ファンタジーとして楽しめる映像になっていると感じました」。
「音像がすごくタイトなロックが多い印象。MV風の映像も織り込まれていた」
映画で使用する楽曲へのこだわりも強いガン監督。ヒャダインは本作の音楽について「めちゃくちゃかっこいい!」と絶賛した。「音像がすごくタイトなロックが多い印象ですね。ワイドな感じじゃなく、キュッと締まった曲ばかりなので、映画の作風にもバチバチに合っていました。要所要所にミュージックビデオ風の映像も織り込まれていたし、全体的に音楽との相性はすごくよかったですね。僕はミュージカル映画も大好きなので、そういう意味でもすごく楽しめました」。
昨年からのコロナ禍で、いまだ日常生活に制限のある現在。“新生スースク”の痛快さはひときわ気持ちよかったようだ。「この1年半くらい、みんな生活以外のことでいろんなことを考えざるを得なかったと思うんです。そんななか、この作品を観ている2時間は、ただ目に入ってきた情報を見て大笑いできました。なにかを観るということは、情報をインプットすることなので、本当に疲れている時は映画すら観たくなくなります。でも、この映画は心が疲れた時でも楽しめちゃう、とにかくスカっとできる映画ですね!」。
だからこそ、大きなスクリーンで観たい映画だとヒャダインは締めくくった。「迫力ある映像と音で楽しみたいし、なによりたくさんの人たちと観るのが似合う映画だと思います。本当なら応援上映で、大声を出したりいろんなところにツッコみながら観られたら最高なんですが。それはまだ難しいとしても、ほかの人たちと一緒になって笑いながらもう一度観たいと思います」。
取材・文/神武団四郎