「怪獣自衛隊」井上淳哉も熱狂した“新生スースク”のクレイジーぶり「全編どんでん返しの繰り返し(笑)」
愛すべきぶっ飛んだ14人の極悪たちが大暴れする『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』(8月13日公開)。本作を手掛けたのは、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズで知られるジェームズ・ガン監督。DCとマーベル、2大アメコミブランドを股にかけるだけでなく、アフターコロナの映画業界の未来を託されたと言っても過言ではない天才クリエイターだ。
そんなガン監督の最新作をいち早く鑑賞したのが、漫画家の井上淳哉だ。ゲームクリエイター出身で、「BTOOOM!」や「怪獣自衛隊」などで知られる井上は、映画『妖怪大戦争』(05)、『妖怪大戦争 ガーディアンズ』(8月13日公開)で妖怪のキャラクターデザインを務めるなど、メディアを超えてマルチに活躍している。ぶっ飛んだやばい悪党たちが減刑を条件に「怪獣」プロジェクトへ挑む本作の見どころを、クリエイター目線で語ってくれた。
「最初に“ヒドい”と感じたことが、時間差で“おもしろい”に変わっていく」
映画を観終えた井上は開口一番、「裏切られっぱなしでした」と笑った。「映画を観ている時は、こうなるんだろうなと予測しながらストーリーを追いかけますが、今回はそれが全部裏切られるという。『こう来たか!』の連続でした。漫画のストーリーを書く時、僕は“ここまでやったらダメだろう”とセーブしながら振り幅を決めていくんです。でもこの映画は非道なくらいセーブしていない(笑)。ここまでリミッターを外せる映像作家は、『妖怪大戦争』シリーズでご一緒させていただいた三池崇史監督くらいしか知りません」。
そんなスタイルが、この映画ならではの“時間差の味わい”を生んだという。「例えば、前半の、“新生スースク”のメンバーが敵のアジトらしき場所に乗り込むアクション。容赦ない戦いぶりを目にして、『こいつらヒデー!』と思うわけです。でも戦いが終わると、作り手はすぐ笑わせにかかってくる(笑)。それ込みでちゃんとエンタテインメントになっているので、最初に“ヒドい”と感じたことが、時間差で“おもしろい”に変わっていく。なんだろう、この不思議な気持ちの昂ぶりは…。これが新しいハリウッド映画だと言われたら、恐ろしい領域に入ってきたなという気もします」。
「知れば知るほど愛おしくなるのがサメの魅力」
もともとサメ好きだという井上にお気に入りのキャラを聞くと、そこはもちろん“サメ人間”キング・シャークという答え。「YouTubeでこの映画の予告を目にして、『なんだこのキャラクターは!』と思って以来チェックしてたんです。サメってめちゃめちゃ怖いけど、同じサイズだとシャチには負けるし、イルカにも1対1なら勝てるけど、2、3頭相手だと撃退されてしまったりと、実は繊細で臆病な一面も持っています。知れば知るほど愛おしくなるのがサメの魅力で、それはキング・シャークの動きや仕草などにも受け継がれていましたね。『ロッキー』を思わせる、シルベスター・スタローン(キング・シャークの声を担当)の低音で伸びやかな声にもグッと心をつかまれました」。
一方、デザイン面で印象に残ったキャラクターは“悪カワ”ハーレイ・クイン。「ハーレイは本当にオシャレで、細かいところまでこだわって作られています。メイクや髪色を背景など周囲と調和させているところにも感心しましたが、特によかったのがタトゥー。真っ白い肌の上に黒で際立つように入れているのでメリハリが効いているし、血が出たり顔のメイクが崩れたりしても、タトゥーがシャープなので美しさが保たれていて、こんなところまでこだわるのか…と感心しました。ハーレイが暴れるシーンで、少女漫画のように花びらが飛び散る描写を含め、キャラクターで見ると完全にハーレイの映画になっています」。
「因果応報のような、日本的な解釈が込められている」
キャラクターたちの設定にも、作り手の想いが感じられたという。「例えば、ハーレイが敵の大物と対峙するシーン。ここで作り手は、ハーレイというキャラクターが大切にしているものはなんなのか?どんなワードが彼女の地雷になるのか?をきちんと描いています。作り手の彼女に対するこだわりや愛を感じました」。遊び心ある小ネタも楽しめたという。「ネズミを操るラットキャッチャー2のことを、コードネームで『ラタトゥイユ』と呼んでいました。これはきっと、ネズミとコックの青年がコンビを組むアニメーション『レミーのおいしいレストラン(原題:Ratatouille)』ですよね。それと映画のオープニングで、小鳥にボールを投げつけたサバントが回り回って鳥に仕返しされるという展開は、怪談や妖怪ではおなじみの因果応報のような、日本的な解釈が込められていると感じました」。