富野由悠季との制作秘話が明らかに!『G-レコ』『閃光のハサウェイ』コラボトークイベントが開催
劇場版『GのレコンギスタIII』「宇宙からの遺産」(公開中)と『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(公開中)、両作品の大ヒットを記念して12日、新宿ピカデリーにてコラボスタッフトークイベントが開催。両作品に携わった株式会社サンライズの仲寿和プロデューサーと撮影監督の脇顯太朗が登壇した。
前回8月4日に行われた2人のトークイベントでは、両作品の共通点や制作に当たっての心構えなどが語られたが、今回は「宇宙からの遺産」のメイキング的な視点からトークを展開。まずスクリーン上に映しだされたのは、作品の顔とも言えるタイトルロゴ。それを見ながら、演出の吉沢俊一からの指示や富野からの詳細な追加指示がどのように出されたか説明していく脇。
富野の指示ではサブタイトルの「宇宙からの遺産」の文字が発光するタイミングまで事細かに書かれており、それについて「ここまで細かく描かれたら、このままやるしかない。これを再現すべく色々と考えるわけです」と作業時の心境を明かす。結果的に脇が選択したのは「発光する文字のエフェクトを手で描く」というアナログな方法だったという。
7種類ほどの素材を使って、動き発光する流れを作り出したという脇は「極端なデジタル感が出ると、富野監督は『こういうことではない!』と言うので、書き味というかちょっとした揺らぎみたいなものがないと違うと言われると思いました」と明かし「想定したアナログ感が出たと思います。イメージ的には1980年代後半から1990年代中盤ぐらいのSFの劇場映画の予告編みたいな雰囲気です。『昔こんなのを見たな』と思ってもらえるようになりました」と語り、その仕上がりに富野も大満足だったとか。
続いて話題は、テレビシリーズのアイキャッチで使われたキャラクターがダンスする姿と、その背景が様々な色に変化しながら流れる水が映しだされるエンディングの撮影処理について。水の流れの映像を作成した脇は、富野からの希望で水の流れが使われるに至ったことを明かし、実写の素材を加工して作成したことや、一度作ったものに対して富野からNGが出されショックを受けたことなど様々な試行錯誤を重ねたと告白。
「あのエンディングが成り立っているのは、色の載せ方やテロップも含めた演出の効果が強く、まさに富野マジックによるものなのです」と明かす脇。それには仲も「ふわっとしたオーダーから、各セクションの人が知恵を出してみんなで作り上げていくと言う感じがすごく良いと思います」と、感慨深げに語った。
ほかにも脇が、「富野監督は『これはダメだ!』と言ってくれるし、よくできた時には『これはいい!』と言ってくれる。あとあまり神経質になって作業をやるなとも言われます」と振り返ったり、「細かいことを緻密に作るよりも、大きくしっかり見せることを重視していますよね。リテイクでちょっと調整しただけだと『なにも変わってないじゃないか』と言われますからね」と仲が語るなど、富野とのやり取りのコツについて大盛り上がり。初めて富野に怒られたことや、昔の富野の様子などの貴重なエピソードが、随所に笑いを交えながら語られていった。
最後に「以前、富野監督は“ニュータイプ”だという話をしましたが、いま劇場にわざわざ『G-レコ』を観に来てくださる人たちのほうが“ニュータイプ”の素質があると思います(笑)。今後のアニメーションの世界を左右する可能性を持っている方たちなので、大事にしていければと思っています。いままさに第4部の作業中ですので、続編を待っていただければと思います」とメッセージを送る脇。「こうして観に来てくれることに我々は支えられています。これからも『G-レコ』と富野由悠季をよろしくお願いします」と呼びかけた。
文/久保田 和馬