巨匠・富野由悠季の創作力とは?スタッフ対談で明かす、『G-レコ』&『閃光のハサウェイ』制作秘話
「『G-レコ』と『閃光のハサウェイ』は、真逆の存在」(小形)
――『閃光のハサウェイ』と『G-レコ』では、撮影におけるテーマの置き方などはそれぞれの立場でどのように考えていらしたのでしょうか?
小形「『G-レコ』と『閃光のハサウェイ』は、僕のなかでは真逆の存在でしたね。『閃光のハサウェイ』の作業をしながら『G-レコ』のチェックをしていると、色の鮮やかさをより感じることができて、富野さんが映像全体の豊かさを目指していると改めて理解しました。『G-レコ』は『アルプスの少女ハイジ』のような、セルテイストの柔らかさを残しつつ、色彩豊かな画面にしたいというコンセプトがあり、それを脇さんが良い感じに仕上げてくれて。テレビシリーズでもいろんなことにチャレンジしつつ、それを劇場版では1本の映画としてうまく統一感を出してもらっています。特に第3部は、脇さんの手腕で、とても綺麗にまとめてもらった印象が強いですね」
脇「そう言っていただけるとうれしいです」
小形「『閃光のハサウェイ』は監督の村瀬(修功)さんがこだわる色の考え方で、モノトーンのように見せる方向性を模索していきました。そのなかで、『ガンダム作品だからもう少し色を出してほしい』とお願いして。今作は村瀬さんの考える表現のなかではすごくキャッチーな方向に色を振っているんですが、それでも実際の画面はかなり暗いです(笑)」
脇「『閃光のハサウェイ』に関しては基本的にはリアリティを追求していくみたいな方向性の画面作りではありました。ただ、単純に実際に起こっている現象、例えば爆発してビルが崩れるという状況があったとしても、それをそのまま描いて終わりではなく、見え方を一考し、工夫もしています。村瀬さんは映像のなかで形状や体のシルエットでキャラクターやメカを見せていくやり方なので、どこまでシルエットを立てて、画としてメリハリを付けていくかということを気にして作業をしました」
脇「一方、『G-レコ』では、キャラも背景も、なにが起こっているのかもちゃんとわかりやすくしっかり見せるようにしています。富野さんは『子どもにもわかるように作りたい』という話をされていたので、難解さを出すというよりは、どちらかと言うとわかりやすくしたいという作り方でした。撮影的な“合う”、“合わない”は考えながら撮っていたという感じですね」
「意図を汲み取るという意味ではそれぞれに難しさがあった」(脇)
――比較するのは難しいと思いますが、どちらの作品の方が映像表現として苦労されたというような感覚はありましたか?
脇「大変さはそんなに変わらないです(笑)。『閃光のハサウェイ』に関しては画の作り方を考えながら撮らないといけない。『G-レコ』はカメラワークがとても特徴的なので、それを富野さんや演出の吉沢俊一さんの意図する画面にすべく、考えを拾って表現するのが大変でしたね。富野さんも村瀬さんもタイプが違います。村瀬さんは、イメージがハッキリしているところとしていないところが混在していて、『こんな感じですか?』と提案すると『どうだろう、どうだったら正解なんだろう?』と一緒に探っていくタイプ。富野さんは『これじゃない。その理由はこうだから。なので、もっとこうする必要がある』とズバっと言ってくるタイプ。どちらのやり方も、意図を汲み取るという意味ではそれぞれに難しさがあったという感じですね」