「上白石萌歌や細田佳央太がまぶしい!」『子供はわかってあげない』の沖田修一監督と原作者・田島列島が対談
「田島先生が描かれた原作の雰囲気をまるごと映画にできたらいいなあと思いました」(沖田)
――美波の母、由起役の斉藤由貴さんもぴったりでした。キャスティングのキモとなったのはどんな点ですか?
沖田「僕は斉藤由貴さんの出ている作品が好きでしたし、上白石さんと並んだ感じもいいなと思いました。斉藤さんは昔から少し天然な感じがして、漫画にもあったセリフ『OK牧場』や『やぶからスティック』も斉藤さんが言うとおもしろそうだなと思ったんです。実際に現場で斉藤さんが『これ、“やぶから棒”の間違いですよね?』と本気で言っていて、びっくりしました(笑)」
田島「本当ですか?(笑)。斉藤さんは自然に“おもしろお母さん”という感じが出ていて良かったです」
――くすっと笑える小ネタが散りばめられている一方で、「先生のことを忘れても、もじ先生から教わったことを忘れない子どもはいっぱいいるんじゃない」といった心に響くセリフもたくさんありました。人に教える、次の世代になにかを伝えていくことの大切さが改めて染み入りましたが、沖田監督は演出するなかで、なにか気づきはありましたか?
沖田「原作を読んで、人に教わったことなら自分にも教えられるという、“継承”の話だなと僕は捉えました。そういう意味では、僕自身も誰かから教わったような芝居のエチュードを今回、上白石さんたちにも試したし、そうやってなにかを残していけたらいいなと思いました。そこも含めて、すべてが橋渡しなんだという意識があり、そこは心掛けてやっていた気がします」
――映画を観終わって、ひじょうにすがすがしい気持ちになれました。田島先生は、いかがでしたか?
田島「すごくいい夏映画になったなと。そして、上白石萌歌さんという女優の美しさを堪能する映画でもありますね」
沖田「ありがとうございます。僕自身はただ、田島先生が描かれた原作の雰囲気をまるごと映画にできたらいいなあと思っていたので、僕はそこでも橋渡し的な役割なのかかもしれません。この原作だからこそ、実際の役者が演じるおもしろさがあると思ったし、自分のなかでチャレンジでしたが、きっといい映画になるんじゃないかなと思っていました」
――田島先生にとって、本作が初めての実写映画化作品となりました。
田島「家族や親戚がすごく喜んでくれました。祖母は公開前に亡くなりましたが、私が漫画家になったことより、映画化されたことを喜んでくれて、それはすごくうれしかったなと思いました」
――ついに作品が公開されましたが、いまの想いを聞かせてください。
沖田「いろいろあって公開が延びていたので、とにかく早く観てもらいたいという気持ちでいっぱいでした。ひたすら楽しい映画にしたいと思って作ったし、実際そういう映画に仕上がったと思います。夏らしい映画ですし、ぜひ皆さん、劇場へ涼みに来てください!」
取材・文/山崎伸子