「上白石萌歌や細田佳央太がまぶしい!」『子供はわかってあげない』の沖田修一監督と原作者・田島列島が対談
「上白石萌歌さんと細田佳央太くんがあまりに美しく感動しました」(田島)
――美波ともじくんのやりとりでは、特に屋上で想いをぶつけ合うシーンに胸がときめきました。
田島「おばさんみたいな年齢に差し掛かった私から見ると、2人があまりにも美しくて感動しました。やはり生身の人間に演じてもらうってすごいことだなと」
沖田「撮っていても感動的でした。実際に本人たちもすごく感情が高ぶりながら演じているなあと感じたので、あのシーンはあまりたくさんテストをしないようにしました」
――2人がきちんと正座して、一生懸命お互いと向き合おうとする姿からは、人柄がにじみでていて、胸キュンでした。
沖田「そこは原作にもありましたが、田島先生の心意気を感じました」
田島「美波が笑いながら座り込んでしまったので、もじくんも美波の目線に合わせて座らせたら、ああなっちゃいました(笑)」
――もじくん役の細田さんも上白石さん同様に、すごく役にハマっていましたが。
沖田「細田くん自身も、もじくん同様に器用ではなかったと思います。あるシーンでどうしても思ったようにいかなくて、『よくわからない』と一人で頭を抱えて煮詰まっていたこともありました。一生懸命だからこそ、そうなってしまうのかと思います」
――役柄同様の不器用さを持ち合わせていたんですね。
沖田「そうです。ただ、撮影した当初の細田くんは17歳でしたが、その年齢にしては、変な肝の据わりをしていて、大人びた感じもありました」
田島「私もそういう印象です。仕事場だからか、まだ17歳なのにちゃんとしてる感じを受けました。また、改めて完成した映画を観た時、男性の監督さんに撮ってもらったからか、もじくん自体に“生身の男感”があってすごく良かったです(笑)」
沖田「やっぱり男の目線が入ったんですかね?」
「豊川悦司さんは本来すごくカッコいい人なのに、すごくおもしろいおじさんに映っていました(笑)」(田島)
――キャスティングの妙と言えば、美波の父親、藁谷友充役の豊川悦司さんも原作とは違う独特の存在感を発揮されていました。本作は沖田監督とふじきみつ彦さんとの共同脚本ですが、豊川さんにあて書きしたシーンもあったようですね。
沖田「そうなんです。友充役に豊川さんが決定してからは、2人で友充のセリフをどんどん変えていきました」
田島「本来はすごくカッコいい人なのに、すごくおもしろいおじさんに映っていて良かったです(笑)」
――友充は超能力者のように人の心が読めるという設定です。映画ではそこをわかりやすく描かなかったけど、豊川さんが演じることで、本当にそういう人なんじゃないかという説得力を感じました。
沖田「はしゃぐ豊川さんもいいのですが、やっぱり真顔で『人の頭の中が見えるんだ』と言う豊川さんが本当におもしろいなと思いました(笑)。友充役は実に茶目っ気があって、娘と一緒にいたいという気持ちが伝われば伝わるほど、なんだか笑えてきます。見ていてめちゃくちゃ楽しかったので、先生が描かれた原作の範疇を超えて、テントを買ったりとか、いろんな謎の行為にも出ています」
――田島先生は、豊川さんのどのシーンが良かったですか?
田島「やっぱりブーメランパンツのシーンです(笑)」
――確かに、実のお父さんとはいえ、これまで一緒に暮らしていたわけでもないし、そんな男性がいきなり水着姿で自分に近寄ってきたら、誰でもドン引きしますよね(笑)。
田島「脚本段階から、どんなシーンになるのか楽しみでしたが、まさかあんなにおもしろいシーンになるとは」