歴代ガンダムシリーズ最高興収『閃光のハサウェイ』、“担当編集”井上伸一郎が語る小説の誕生秘話「シェイクスピアか!と思った」

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歴代ガンダムシリーズ最高興収『閃光のハサウェイ』、“担当編集”井上伸一郎が語る小説の誕生秘話「シェイクスピアか!と思った」

8月19日、新宿ピカデリーにて映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』のトークイベントが開催。美樹本晴彦氏(キャラクターデザイン原案)、森木靖泰氏(メカニカルデザイン原案)、小説の担当編集だった井上伸一郎(KADOKAWA顧問)が登壇し、小説「閃光のハサウェイ」をテーマに語り合った。

公開中のガンダムシリーズ最新作『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』が、興行収入20億円を超え、とうとう歴代ガンダムシリーズにて最高興行収入を記録した『機動戦士ガンダムIII めぐりあい宇宙編』(1982年公開)の興行収入23億円まであとわずかとなった。同イベントは、この大ヒットを祝して開催。

『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は、アムロとシャアの最後の戦いを描いた『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』の“その後”のストーリーで、ブライト・ノアの息子ハサウェイ(小野賢章)を主人公としたアニメ3部作の第1弾。地球連邦政府が強制的に民間人を宇宙へ連行する政策“人狩り”を実施するなか、反地球連邦政府組織マフティーが始動。その新たな戦いを縦軸に、ハサウェイ、謎の美少女ギギ(上田麗奈)、連邦軍大佐ケネス(声:諏訪部順一)の交差する運命を横軸に、重厚な物語が紡がれる。

原作は、ガンダムシリーズの生みの親、富野由悠季監督による同名小説「閃光のハサウェイ」。小説の担当編集だったKADOKAWA顧問の井上氏は「アニメになってこんなにうれしいことはない」と笑顔を見せる。そして「1988年に『逆襲のシャア』が公開された当時、『これでガンダムは最後じゃないか』と噂になっていたんですが、私はハサウェイのこの後の人生が気になっていて。一方で富野監督はブライト・ノア一家が気になっていたという。だから私のオファーとマッチしたのもあって、とりかかっていただけました」と誕生秘話を語った。

【写真を見る】美樹本晴彦氏が手掛けたイラスト。ヒロイン・ギギのデザインは難しかったという
【写真を見る】美樹本晴彦氏が手掛けたイラスト。ヒロイン・ギギのデザインは難しかったという

そんな井上氏は、富野監督が手掛けた小説について「『閃光』と言えば、『聖戦士ダンバイン』に『閃光のガラリア』という回があったので…。タイトルで、悲劇的なものかなと思ったら案の定…?予想を上回る?正直、シェイクスピアか!と思いました」ともコメント。

小説を読んだ美樹本氏も「やっぱりショックでしたよね。最後の部分だけでなく、ウワッと思ったのはその後のエピローグ的な部分も。やっぱりひと筋縄じゃいかないなと。好きである反面、グッと締め付けられる気持ちでした」と感想を語った。ちなみに森木氏は「すみません、まだ読んでません」とのこと。「こうなったら3部作全部終わってから読もうかなと思っています」と話した。


美樹本氏は、これまで角川スニーカー文庫のガンダムシリーズの挿絵を描いてきた。しかし、登場人物のギギ・アンダルシアを描くことには苦心してきたそうで、「正直捉えどころがなくて。恐らくいまでも捉えられないかな。映画を観てすごく感じたんですが、止まっている画だけで作れるキャラじゃないなと。なにか特徴を持たせるとか、髪型をどうこうとか、そういう小手先の技みたいなものでどうにかなるキャラクターじゃなくて。やっぱり動いてなんぼ、しゃべってなんぼみたいな。それを当時、約30年前に小説の挿絵で描くのは酷でしたね、自分にとっては」と振り返っていた。

ちなみに美樹本氏は、「実はガンダムの仕事はマクロスシリーズの仕事より古くから関わっていた」のだという。「マクロスの前段階の企画をお手伝いしていた頃、アニメスタジオに通うようになって、ガンダムの同人誌の絵を見ていただき、その方から連絡があって。そのことがきっかけでサンライズの玩具部門の絵を描く仕事をいただいていたんです」と、ガンダムと関わり始めた頃についても語った。

映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』のヒットを祝してトークイベントが開催
映画『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』のヒットを祝してトークイベントが開催

最後に、美樹本氏は『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』について「何度でも観返せるアニメーションになっていると思う。ストーリーを知っている方はもちろん、知らない方にとっても非常に衝撃的、且つ、心をギュッと締め付けられるような作品。3部作全て劇場でご覧いただきたい」とアピール。井上氏は「『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』は小説の世界線じゃなくて、『逆襲のシャア』の世界線で作られている。私はまだアニメは観ていないのですが、ひょっとしたらラストは変わるのかな?とか、ドキドキしながら、続編も待ちたいと思います」と話していた。

取材・文/平井あゆみ

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