『大魔神』『帝都物語』と密接な関係も!荒俣宏が明かす、“裏日本書紀”としての『妖怪大戦争 ガーディアンズ』
「知恵を使うことは、とてつもなく恐ろしいこと」
大魔神について熱弁を振るった荒俣は、さらに本作が従来の妖怪映画と異なるスタンスを持った作品であることをアピールする。その大きなポイントとなっているのは、ケイを導く妖怪である杉咲花演じる“狐面の女”と、日本の妖怪たちの計画を阻止しようとする大沢たかお演じる“隠神刑部(いぬがみぎょうぶ)”。そして赤楚衛二演じる“天邪鬼(あまのじゃく)”だ。
「日本における妖怪のシンボル的存在となってきたキツネとタヌキを物語のメインに据えることが、今回ぼくが望んでいたとても大きな要素でした。初めは製作陣も皆微妙な反応をしていましたが、できてみたらこれまでキツネや狸の妖怪映画が盛んに作られてきた理由がよくわかりました。やはり一番感情移入しやすい異界の仲間なのだと。人間の生活のなかで最初に出会う、よくわからない存在は野生動物でしたからね」。
つづけて天邪鬼についても言及する。「我々が子どもの頃、キツネとタヌキの次に有名だったのが天邪鬼でした。人間と妖怪のお付き合いにおける基本的な方法論を身に付けた天邪鬼は、どちらの味方にもつかない中間の存在であり、どちらにも嫌われて孤立してしまう。本作でも友だちもいなくて誰も信じない、話してもイエスノーをあべこべに言います。『旧約聖書』でアダムとイブが自分の知恵を使ったばかりに楽園を追放されたように、知恵を使うことはとてつもなく恐ろしいことです。天邪鬼はイエスノーを通して自分で考える苦しみや、楽園にいられない苦しみを体現するキャラクター。これまでの妖怪映画にあまり出てこなかった天邪鬼をメインに据えたのは、我々人間が知恵を使って色々変えていったことが、現在のコロナ禍での困難と希望につながっているのだと考えることができるからです」。
最後に荒俣は、前作の『妖怪大戦争』で主人公の少年を演じた神木隆之介が演じている加藤先生についても触れる。名前で示唆されているように、荒俣の代表作である「帝都物語」に登場する魔人・加藤保憲との符号を感じずにはいられない。「また“加藤さん”を出すというのも少々恥ずかしいのですが」と照れ笑いを浮かべながら、「でも大きな役割を持つ加藤先生が物語のラストにサジェスチョンを与えることで、『これからまだなにかあるのだろう』という含みを持たせています。加藤先生だったり、劇中で言及される“あのお方”だったり、まだ切り札が用意されているのです」と、物語が続いていくことを視野に入れていると明かす。
「いままでの妖怪映画が江戸時代や『日本書紀』まで遡るものだったことを考えれば、今後はさらに縄文時代や先史時代の妖怪まで話を拡げていくことにも、興味を惹かれますね」と、まだまだパワーアップの余地を持つ物語の行く先に想いを馳せ、目を輝かせていた。
取材・文/久保田 和馬