【今週の☆☆☆】アンジーが“生身”な熱演を見せる『モンタナの目撃者』、笑いと涙の人間賛歌『アナザーラウンド』など、週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画。今週は、山林火災と暗殺者というダブルの脅威のもと、少年を守り抜こうとする女性の戦いを描くサスペンス、北欧の至宝マッツ・ミケルセン主演による、お酒が題材のユニークな人生賛歌、崖っぷちの仕立て屋がオーダーメイドのドレス作りに挑戦するヒューマンドラマの、心を動かされる3本!
A・ジョリーがスーパーヒロインではなく、生身の人間の戦いを熱演…『モンタナの目撃者』(公開中)
アンジェリーナ・ジョリーが久々にアクション映画に戻って来た!森林消防隊の隊長にふんした彼女が、体当たりの熱演を披露する本作。主人公ハンナは、森林火災から子どもを救えなかったことに苦悩していた。そんなある日、暗殺者に父を殺された少年を救出したことから、彼女は少年を守り抜こうと決意。少年ともどもヒロインは暗殺者に追われ、そこにスリルとサスペンスが高濃度で脈づく。迷路のような森林を逃走し、ときに応戦し、迫りくる火災をかわしながら戦うヒロイン。ジョリーの熱演は、まさにそこで輝きを放つ。『トゥームレイダー』『ウォンテッド』のスーパーヒロインと異なり、ここでの彼女は生身の人間だ。アクションのリアルな迫力に注目!(映画ライター・有馬楽)
お酒で人生が変わる!?日常を変えたい男たちの悲哀をユーモア&シニカルに…『アナザーラウンド』(公開中)
監督がトマス・ヴィンターベア、主演にマッツ・ミケルセン。好きな人にとってはその名前を聞くだけでテンションの上がるタッグが、マッツにカンヌ国際映画祭男優賞をもたらした『偽りなき者』(12)ぶりに実現!先日の第93回アカデミー賞国際長編映画賞にも輝いたこの『アナザーラウンド』は、「血中アルコール濃度を常に0.05%に保つと仕事もプライベートもうまくいく」という嘘のような仮説を実証する冴えない中年教師4人組の奮闘劇。とにかく劇中では酒を飲んで酔っ払いまくるということもあり、「ハングオーバー!」シリーズのようなノリを想像する人もいるかもしれない。しかし、そこは北欧映画で、酒が持つ良い面もビターな面も描きながら、単調な日常を変えたい男たちの悲哀をユーモアも交えながら皮肉たっぷりに映しだしていく。聞けば、同世代のヴィンターベアとマッツはデンマークのご近所で暮らし、家族ぐるみの付き合いがあるほどの仲なのだとか。そういった関係性も反映されたマッツの名演も抜群で、冴えないと言いつつも内面から溢れ出す熟成された色香に思わず見とれてしまう。元ダンサーという経歴を持つ彼が、長年封印してきた“舞い”を縦横無尽に披露する華麗なラストシーンは大きなスクリーンでこそ観たい!(ライター・平尾嘉浩)
人生に窮屈さを覚える人に観て欲しい、爽快な人生再建物語…『テーラー 人生の仕立て屋』(公開中)
ギリシャのアテネで36年、父と高級スーツの仕立て屋を営んで来た50歳のニコス。ところが不況で店は差し押さえられ、父は倒れてしまう。ニコスは移動式の仕立て屋を始めるが、道端で高級スーツが売れるはずもない。途方に暮れていたある日、“ウェディングドレス”の注文を受ける――。最初は尻込みしていた彼が、隣に住む母娘の手を借り、勉強し始める段から物語が息づきはじめる。肝は、ニコスの“超真面目で人付き合いがド下手、だが純粋”なキャラ。そんな不器用男の奮闘が心に染み、ユーモラスさも滲む。ふわふわなウェディングドレスや色とりどりのドレスが、移動式車(手押しからどんどん格上げ!)から風にはためく映像の美しいこと!スーツやドレスの製作過程も楽しい。一方、せっかくの奮闘を父に否定される“旧態を打ち破る困難”や、マッチョ男に見下されるなど“不器用な正直者が馬鹿を見る世の中の常”といったスパイスが厚みをもたらす。今の人生に窮屈さを覚える人に観て欲しい、爽快な人生再建物語。ギリシャ最大規模のテッサロニキ国際映画祭で3冠に輝いた。(映画ライター・折田千鶴子)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!なお、緊急事態宣言下にある都道府県の劇場の一部では引き続き臨時休業を案内している。各劇場の状況を確認のうえ、足を運んでほしい。
構成/サンクレイオ翼