中谷美紀が明かす、女性総理を演じて得た“幸せ”「自分の代わりに凛子がすべてやってくれる」
遂にこんな時代が!?『総理の夫』(9月23日公開)では、42歳の史上最年少にして日本初の女性総理の誕生が描かれる。“お初尽くしの総理”を演じたのは、中谷美紀。本作は中谷にとって、『繕い裁つ人』(14)以来5年ぶりの主演映画、かつ結婚後初の主演作となる。
時代劇『清須会議』(13)や『利休にたずねよ』(13)、大河ドラマ「軍師官兵衛」、あるいは『FOUJITA』(15)などで演じた役からも、“たおやかかつ凛とした女性”というイメージが強い中谷。本作ではその名も“凛子”を熱演し、劇中の国民のみならず観客をも大いに熱狂させてくれる。「この役を演じることは、とても幸せでした」と語る中谷に、凛子を演じた喜びや、そこで感じた意義について語ってもらった。
「田中さんは、優秀な助監督になれるのでは」
原田マハの小説「総理の夫 First Gentleman」を映画化した本作で日本初の“ファーストジェントルマン”として担ぎだされる、世事に疎い鳥類学者の夫、日和役を演じるのは、田中圭。政界という未知なる世界に目を白黒させ、想定外の騒動に巻き込まれながら、愛する妻を応援しようと走り回る姿は、コメディを得意とする田中の十八番。中谷も「間合いをはじめ、おどけた顔とか、キョトンとした表情とか、本当にお上手で」と口元をほころばせる。
その一方で、「凛子が進退を決めなければならないシーンでは、日和くんが自分の腕で涙をぬぐう姿や表情を見て、“この人は、本当に妻が総理になったことを心から応援しているんだな”と実感して、思わずジーンとしました。日和くんって、働く女性にとって理想の男性像。現実にはこんな上手くはいかないと思いますが(笑)、そこを田中さんが上手く演じてくださって。主演にもかかわらずとても肩の力が抜けていて、いい意味で沢山お仕事をこなしていらっしゃる軽やかさが、日和くんにピッタリだなと思いました。しかも現場の様子をとてもよく見ていらっしゃって、それはもう優秀な助監督になれるのではと思ったほど」と絶対的な信頼の厚さを示す。
さらに日和を“働く女性にとっての理想の夫像”としながらも、鋭い指摘を差し挟む。「凛子と日和の関係は、これまでの男女の立場が逆転しただけで、根本的な問題の解決にはなっていないんですよね。日和くんのほうがいろいろ諦めなければならず、犠牲になることも多いので、凛子には贖罪の気持ちもあるんです」と、しばし考えを巡らせる場面も見られた。
「滅多に感情を見せない人が感情を見せる瞬間は、これほどまでに人の心を打つものかと学びました」
冒頭、思わず拍手喝采したくなるのが、レッドカーペットが敷かれた階段を下りてくる“閣僚人事発表”で、黒いロングドレスを身に纏った美しき新総理、凛子の姿。撮影時を振り返って中谷は「気持ち良かったですよ(笑)!」とニッコリ。「その地位に自分が居るということより、これで社会が変わるんだと、女性の意見が社会に反映されることへの期待や希望が感じられたことがうれしくて」と、凛子として感じた喜びを語る。
実際、既に他国では、女性リーダーが国や国家レベルの重要組織を背負っている。「韓国、台湾、ドイツそのほか、EUの委員長やECB(欧州中央銀行)に至るまで、かなり増えましたよね。ニュージーランドの首相は、現職で出産もされて。そういう方々の様子をニュースで見たり、新聞で読んだりして参考にしました」と役作りの糸口を語る。その観察から、共通点は「アンガーマネジメントがしっかりしていること」と分析。「ヒステリックに主張するだけでは、人を率いることはできない。とにかく大仰に述べるのではなく、常に淡々と言葉を発するよう心掛けました」と役作りに活かしたそうだ。
そんななかで中谷が最も感銘を受けたのは、ドイツのメルケル首相だったそう。「今回のコロナ禍で、何度か国民に直接語り掛けられたのですが、本当にご自身の言葉で、国民に伝わるように話されていて。科学的な根拠に基づき冷静に対処されていた首相が、ある時、声を荒げて“本当に真剣に考えなければいけない問題だ”というようなことを訴えられたんです。滅多に感情を見せない人が感情を見せる瞬間が、これほどまでに人の心を打ち、動かすものかと学ばせていただきました」。
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