いま最も輝きを放つ若手スター、ティモシー・シャラメ&ゼンデイヤを独占インタビュー。「恐怖心を受け入れることを『デューン』から学んだ」

インタビュー

いま最も輝きを放つ若手スター、ティモシー・シャラメ&ゼンデイヤを独占インタビュー。「恐怖心を受け入れることを『デューン』から学んだ」

フランク・ハーバートが著した原作を長年愛読していたという、ドゥニ・ヴィルヌーヴが脚本・監督を務めた『DUNE/デューン 砂の惑星』(10月15日公開)。10191年、銀河系間の権力闘争に巻き込まれた青年ポールとアトレイデス家は、「デューン」と呼ばれる砂の惑星へと移住する。物語の中心となるポールを演じたティモシー・シャラメと、ポールの夢の中に現れる、若きフレメン(原住民)の女性チャニを演じたゼンデイヤが、ベネチア国際映画祭でワールド・プレミアが行われたばかりの興奮冷めやらぬなか、独占インタビューに答えてくれた。

シャラメ演じる若き戦士ポールは、砂の惑星「デューン」に降り立ち、宇宙をかけた闘いに挑む
シャラメ演じる若き戦士ポールは、砂の惑星「デューン」に降り立ち、宇宙をかけた闘いに挑む[c]2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

「ティモシーとは一生の友達になれそう」(ゼンデイヤ)

壮大な銀河叙情詩の主人公である青年ポールの成長を描くこの物語は、ティモシー・シャラメの存在が必要不可欠だった。『君の名前で僕を呼んで』(17)で、世界中の注目を集める若手俳優となったシャラメは、「彼以外は考えられなかった。ティモシーと一緒に映画を作ることをずっと夢見ていた」というヴィルヌーヴ監督の熱烈なラブコールを受け、自身のフィルモグラフィのなかで最も大きな作品かつ、最も大きな役を演じることに武者震いしたという。

撮影初日の感想をシャラメは、「僕はいま23歳ですが、まるで少年のような気持ちでセットに足を踏み入れました。それは、僕がハンス・ジマーの音楽が流れ、劇場が揺れるような壮大な映画を観て育ってきたからです。それからインディペンデント映画に夢中になって、いままではそういった映画に多く出演してきました。だからこれは、僕の新しい局面なんです。ゼンデイヤ、レベッカ・ファーガソン、オスカー・アイザック、ジョシュ・ブローリン、ジェイソン・モモアたちと一緒に仕事をすることで、僕らはすべてあわせて1つのクリエイティブ・チームであり、自分は大きなパズルの1ピースであると実感しました」と述べる。

ヴィルヌーヴ監督とシャラメは互いにいつか一緒に仕事がしたいという念願が叶った模様
ヴィルヌーヴ監督とシャラメは互いにいつか一緒に仕事がしたいという念願が叶った模様[c]2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

隣に座っているゼンデイヤも、映画のスケールの大きさに圧倒されたという。「これだけの大きな作品は私にとっても初めての経験でした。こんな機会を与えていただいたのが信じられないほど」と、感慨深げにこう続けた。「撮影は、いろいろな意味で私が思い描いていた夢を超えていました。撮影に参加したのは限られた時間でしたが、一緒に仕事をしたすべての人のファンになりました。このような素晴らしいキャストとスタッフ、そして文字通り衣装やセットデザインなど、なにからなにまで素晴らしかった。撮影中も、幸運にもこの作品に携わることができて、『ああ、夢が叶ったんだわ』と実感していました」と撮影を思い返す。

ゼンデイヤが演じるのは、砂の惑星「デューン」の自由民フレメンの戦士、チャニ
ゼンデイヤが演じるのは、砂の惑星「デューン」の自由民フレメンの戦士、チャニ[c]2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved


映画『DUNE/デューン 砂の惑星』では、壮大な物語の導入部が描かれる。シャラメ演じるポールとゼンデイヤ演じるチャニは、これから先の物語、第二部でさらに深く結びついていくという。実際に2人が一緒に撮影することはなかったが、シャラメはリハーサルの本読みでゼンディヤが登場した時のことを思い出し、「その時の彼女がとても魅力的で、今後生まれるであろうポールとチャニの相性がはっきりと感じられたんです。それをこれから作る映画でお見せできるといいと思うんですけどね」と言いながら隣の彼女に目配せする。

それを受けたゼンデイヤは共演シーンがなかったことを残念がり、「(先に撮影していた)シーンを見学している時に、それぞれのキャラクター同士が化学反応を起こしているのがわかって、『ああ、これはいい感じだな』と思っていました。だから、私がセットに入った時に彼らも同じように感じてくれるといいなと思って、ずっと指をくわえて見ていたんです(笑)。ティモシーとドゥニ(ヴィルヌーヴ監督)、キャスト、スタッフのみなさんが、チームの和を温かくして安全な撮影環境を整えてくれていたので、すんなり撮影に入っていけました。ティモシーとは、これから一生の友達になれそうです」と語る。

チャニはポールの夢に現れるミステリアスな美女。果たしてポールとの関係は?
チャニはポールの夢に現れるミステリアスな美女。果たしてポールとの関係は?[c]2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

「『デューン』には、恐れの感情がとても美しく表現されている」(シャラメ)

これはポールの成長譚であり、アトレイデス家を率いて惑星「デューン」に降り立った彼らを、灼熱と砂嵐、巨大なサンドワーム(砂虫)といった様々な困難が迎える。ポールは、前進するために恐怖心と向き合うことになるのだ。この究極のテーマについてゼンデイヤは「この話題が出るたびに、この言葉を書き留めて、家のどこかに貼っておきたいと思うんです。『恐怖心が常にあるからこそ、自分に言い聞かせようとすることがたくさんある』。恐れは自然なことだと思います。特にクリエイティブな仕事をしていると、自分の仕事に対して自意識過剰になったり、懐疑的、批判的になったりすることがありますよね。でも私たちの仕事では、自分が踏み出す一歩がどんなものであれ、それを完全に受け入れることができるような、恐れを知らないレベルに自分を持っていく必要があると思っています。いざとなったら、恐れを抱く余裕なんてないのだから」と自身の経験をもとに恐怖心について語る。

ポールと母親のジェシカ(レベッカ・ファーガソン)は、デューンでフレメンの戦士たちに出会う
ポールと母親のジェシカ(レベッカ・ファーガソン)は、デューンでフレメンの戦士たちに出会う[c]2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

またシャラメは、最近読んでいるというマシュー・マコノヒーの著書(『Greenlights』)を引用しながら「彼は『矛盾ではなくパラドックス(逆説)の中で生きる』と言っています。つまり、とてもクリエイティブな状況でキャラクターがなにかを成し遂げようとしている時、恐怖心は絶対にあるものだから、それを受け入れるべきだと思う。少しくさい言い方になっちゃうけど、僕は「愛」は「恐れ」の反対語だと思っています。少なくとも僕にとっては、恐れとは正反対の感情だから。そして、原作の「デューン」には、恐れの感情の数々がとても美しく書かれています。フランク・ハーバートに、この文章の由来を聞いてみたいものです。ゼンデイヤが壁に貼るならば、僕はタトゥーにしていつでも見られるようにしておきたいですね」と答えた。

『DUNE/デューン 砂の惑星』は10月15日公開!
『DUNE/デューン 砂の惑星』は10月15日公開![c]2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

ヴィルヌーヴ監督が「ポールを演じられるのは彼しかいない」と太鼓判を押していたように、劇中でポールが経験する様々な感情はシャラメ自身を蝕み、彼はそこから這い上がろうともがく。今後作られる予定の第二部では、ゼンデイヤ演じる青い瞳のチャニの存在感も増していくだろう。『DUNE/デューン 砂の惑星』は、眩いほどの輝きを持つ2人のスターの、いましか演じられない姿を映像に閉じ込めたような映画になっている。

取材・文/平井伊都子

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