「音響」の効果も超ハイレベルな『DUNE/デューン』、父と娘を軸に“家族”を描く『かそけきサンカヨウ』など週末観るならこの3本!
MOVIE WALKER PRESSスタッフが、週末に観てほしい映像作品3本を(独断と偏見で)紹介する連載企画「今週の☆☆☆」。今週は、異次元のSFを世に送りだすドゥニ・ヴィルヌーヴの最新作、今泉力哉が、窪美澄の短編集の一篇を志田彩良&鈴鹿央士のフレッシュな面々で描いた家族の物語、「鏡に向かって5回その名前を唱えると殺人鬼が現れる」という、ある地域で語り継がれる都市伝説を巡るホラーの、ジャンル多様な3本!
大スクリーンで“体験”したい人にはマスト…『DUNE/デューン 砂の惑星』(公開中)
映画は劇場の大スクリーンで“体験”したい。そう考えている人にとって、マストだと断言したい作品。画面いっぱいに迫ってくる、宇宙船。砂の惑星の地中から現れるサンドワーム(砂虫)。その巨大さに、ひたすら息をのむ。ややダークな色合いで描かれる、西暦10190年の世界。未来を視る能力に惑わされながら、家族とともに砂の惑星に移住した主人公、ポールが全宇宙の運命を託される壮大なストーリーには、過去のどんな映画とも違うヴィジュアルがあちこちに仕掛けられ、観ているこちらを魅了して止まない。
原作はSFファンに50年以上愛され続け、1984年にはデヴィッド・リンチ監督で『デューン/砂の惑星』として映画化された。今回のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督は、複雑な物語をシンプル設計にして、デューン初心者にもわかりやすく展開。監督が得意とする「音響」の効果も超ハイレベルで、心ざわめく陶酔の世界へ、素直に連れて行ってもらえる感覚だ。(映画ライター・斉藤博昭)
もつれた糸をひとつひとつ丁寧にほぐしていくような優しい物語…『かそけきサンカヨウ』(公開中)
窪美澄の短編小説を今泉力哉監督が映画化。幼い頃に母が家を出て以来、父と2人で暮らしてきた陽。家事をこなし、わがままを言わず、人知れず、大人でいることが自然になっていた。そんな折、幼い娘を連れた恋人と父が再婚。これまで甘えること、甘えられることを知らなかった彼女に、突然、思いがけず、母と妹ができる。戸惑う彼女は同級生の陸に思いを打ち明ける。2人は誰から見てもお似合いのカップル。でも、陸は「好き」という気持ちがわからない。家族ってなんだろう?好きってどんなこと?誰が誰を傷つけたいわけではないのに、人は悩んで、もがいて、絡めとられる。そんなもつれた糸をひとつひとつ丁寧にほぐしていくような優しい物語。確かな演技力で回を追うごとに人気を集めた「ドラゴン桜」の志田彩良と鈴鹿央士が恋と友情の間で通じあう陽と陸をさわやかに演じる。(ライター・高山亜紀)
人種問題を視野に入れながら、久々の続編を成立…『キャンディマン』(公開中)
人気作家クライヴ・バーカーの原作に基づく1992年のホラー『キャンディマン』の続編。とはいえ、ただの続編ではなく、現代にふさわしい内容となった。5回その名を唱えると現われる、かぎ爪を持った殺人鬼キャンディマン。スランプに悩む若き新進黒人アーティストが、そんな都市伝説を基にした創作に取り組むが、やがて周囲で奇怪な事件が続発する…。最初の『キャンディマン』はホラーキャラには珍しい黒人であったことが注目されたが、今回はその点をさらにクローズアップ。人種問題を視野に入れながら、久々の続編を成立させている点に注目したい。『ゲット・アウト』で人種偏見に切り込んだジョーダン・ピール監督の、脚本家としてのイイ仕事!(ライター・有馬楽)
週末に映画を観たいけれど、どの作品を選べばいいかわからない…という人は、ぜひこのレビューを参考にお気に入りの1本を見つけてみて!
構成/サンクレイオ翼