「デューン」で大勝負に出たドゥニ・ヴィルヌーヴ監督&レベッカ・ファーガソンに独占インタビュー

インタビュー

「デューン」で大勝負に出たドゥニ・ヴィルヌーヴ監督&レベッカ・ファーガソンに独占インタビュー

10代のころから原作を愛読し、長い間映画化を夢見ていたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による『DUNE/デューン 砂の惑星』が、ついに公開。時は10191年、彼を取り巻く数奇な運命によって、砂の惑星(デューン)のアラキスに向かうアトレイデス家の後継者ポール(ティモシー・シャラメ)。デューンにおいて、人類は希少な自然資源スパイスの権利をめぐり闘争を続け、灼熱と砂嵐、そして巨大生物サンドワーム(砂虫)と対峙することを余儀なくされる。アトレイデス家のレト公爵の側室でポールの母親、そして聖なる戦士であるレディ・ジェシカを演じたレベッカ・ファーガソンと、自身最大の意欲的なプロジェクトを極上の映像体験へと昇華させたドゥニ・ヴィルヌーヴ監督が独占インタビューに答えてくれた。

若き戦士ポール(ティモシー・シャラメ)は、砂の惑星「デューン」で宇宙をかけた闘いに挑む
若き戦士ポール(ティモシー・シャラメ)は、砂の惑星「デューン」で宇宙をかけた闘いに挑む[c]2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

「ティモシーは第一で唯一のポール役候補」(ヴィルヌーヴ)

ヴィルヌーヴ監督は、「映画制作における最高で最大の決断はキャスティング」だと断言する。『DUNE/デューン』のキャスティングは、脚本を執筆している段階から脳裏に浮かんでいたそうで、ポール役のティモシー・シャラメに関して「第一で唯一の候補だった」と述べる。「ティモシーはとても知的で成熟した若者でありながら、古典的な魂も持ち合わせています。映画監督として作品を作るたびに感じることは、映画の撮影を始めた時と完成した時では、同じ人間ではないということ。映画作りはとても変化の多いプロセスで、自分自身について、映画について、そして人間についても学ぶことができます。ティモシーも私と同じように『DUNE/デューン』を通じて多くのことを学んだと思います。今作は、彼にとっても最大のプロジェクトで、何百人ものスタッフやキャストがいる巨大な撮影現場を乗り切らなければなりませんでした。ティモシーが安心して撮影に臨めるように、カメラの周りの環境を、落ち着いて親密な状態を保つように最善を尽くしました。自分の空間を守ること、集中することを学んでいる彼に、私は言い続けました。これはマラソンなんだよ、と」。

「ティモシーが役を受けてくれなければ映画は成立しなかった」と語るヴィルヌーヴ監督
「ティモシーが役を受けてくれなければ映画は成立しなかった」と語るヴィルヌーヴ監督[c]2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

「好きな俳優を好きなだけ」選んだ、ドリームキャスト

ポール以外のキャスティングにも、ヴィルヌーヴ監督の映画愛が籠められている。ハルコンネン男爵を演じたステラン・スカルスガルドについては、25年前のラース・フォン・トリアー監督作『奇跡の海』(96)を観た時から、いつか一緒に仕事がしたいと願い続けていたそう。「チャン・チェンは『ブエノスアイレス』を観た時から、世界で最も好きな俳優の一人です。カンヌ映画祭の審査員として彼と一緒に過ごす機会があり、偉大な俳優であるだけでなく、とても素晴らしい人間であることも知っていたので、アトレイデス家の心身の健康を見守るユエ医師役をオファーしました。まるでお菓子屋さんにいる子どものようにワクワクしながら『好きな俳優を好きなだけ選ぼう』と言って、キャスティングをしました」と思い返す。

ヴェネチア国際映画祭にて豪華キャストが集合!
ヴェネチア国際映画祭にて豪華キャストが集合![c]2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

「『DUNE/デューン』をSF映画として見てはいません」(ファーガソン)

謎めいた女性集団ベネ・ゲセリットのメンバー、レディ・ジェシカを演じたレベッカ・ファーガソンは、クラシックな出立と相反するような独特な存在感を放つ。ジェシカ役をオファーされた時点では原作を未読だったことが功を奏し、固定観念に縛られることなく自由に演じることができたと言う。「私はキャラクターの中に出たり入ったりするのがとても簡単にできる性質なんです。だから、どんな状態でもジェシカに課せられたことを自分自身にも言い聞かせ、集中して役柄に入るようにしていました。私は『DUNE/デューン』をSF映画として見てはいません。だからこそ、この映画が好きなのだと思います。宇宙やサンドワームなどの超自然的な存在が、映画制作における超越したクリエイティビティを発揮しているという事実が好きなのです。また、キャラクターが直面するドラマや感情の中にある、現代社会と共鳴するようなメッセージも気に入っています」と語り、灼熱の砂漠での撮影にも問題なく適応していたと明かす。

【写真を見る】ティモシー・シャラメ演じるポールの母、レディ・ジェシカを演じるレベッカ・ファーガソン
【写真を見る】ティモシー・シャラメ演じるポールの母、レディ・ジェシカを演じるレベッカ・ファーガソン[c]2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

「私は放浪カメレオンのような生態で、ゆっくりとした動きを好み、暑さに弱いんですが(笑)。(撮影が行われた)アブダビでは熱波を避け、朝4時から6時、夜7時から8時までしか撮影できませんでした。私たちは皆、自分がいかに小さな存在か、この大きな世界の中で自分がいかに意味のない存在であるかを否応がなしに突きつけられました。砂漠にいると、戦うことも勝つことも、戦いのために力をつけることもできず、ただ現状に順応するしか術がありません。この経験で、私は人間として自分でコントロールできないことに適応することが好きなんだと気づきました」。

「すべてのチップを賭け、安全装置未着でジャンプするのが好き」(ヴィルヌーヴ)

今作は、1965年に発表されたフランク・ハーバートによる壮大な原作の導入部を映画化している。惑星デューンを再現する巨大なセット、砂漠での大掛かりな撮影、オールスターキャストなどにかかる製作費は莫大で、今作の興行成績を受けて第二部以降の製作が決定する。このような“大勝負”に出たヴィルヌーヴ監督は、「ちょっとクレイジーなやり方ですが、まず第一部を撮影し公開することに同意しました。このギャンブルはとてもおもしろいと思ったし、私はゲームが好きなので」と十分に手応えを感じていることを伺わせる。

レディ・ジェシカとポールは故郷を捨て、砂の惑星デューンに降り立つ
レディ・ジェシカとポールは故郷を捨て、砂の惑星デューンに降り立つ[c]2020 Legendary and Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved

一方、この偉大な原作に挑むプレッシャーは、製作費でも外圧でもなく、自分自身の過去から来るものだった。「アーティストがなにかに挑戦する際は、必ずリスクと直接結びついています。芸術的な挑戦は自分の限界を超えようとすることであり、これまでにない領域に踏み込もうとすること。そのためには、失敗も視野に入れて選択や決断をしなければなりません。テーブルの上のすべてのチップを賭けて、安全装置がない状態でジャンプするのが大好きです。これまで私が関わってきたすべてのプロジェクトは、リスクに触発され生まれ、結果は恐怖に打ち勝つことによってもたらされました。映画化を決めてから、毎日のように自分自身の恐怖や挑戦、リスクと対峙しなければなりませんでした。最も大きなプレッシャーは、原作を読んだ10代の自分に対するものです。世界を征服したいと本気で考えていた野心的で傲慢なティーンエイジャーが持っていたエネルギーに再び触れ、その時に思い描いたビジョンに接触したかったからです。それは簡単なことではありませんでした」。そう語るヴィルヌーヴ監督からは、作品に対する強い自信がみなぎる。すでに公開されている海外市場では好成績を収めており、第二部製作決定の朗報も近いうちに届けられるかもしれない。

取材・文/平井伊都子

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