盟友ジェイソン・ステイサム×ガイ・リッチーのデビューから最新作までの歩みを振り返り!
ハリウッド最強の男の一人であるジェイソン・ステイサムが、謎多き現金輸送車警備員に扮し、強盗たちに立ち向かう『キャッシュトラック』(公開中)。フランス映画『ブルー・レクイエム』(03)をリメイクした本作でメガホンを握っているのが、ガイ・リッチー監督だ。
互いにとって原点となる作品である『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』(98)以降、本作『キャッシュトラック』で4度目のタッグを組むほど関係の深い2人。実に16年ぶりに2人が顔をそろえた本作の公開を機に、その歩みを振り返っていきたい。
最強ステイサムもデビュー作ではボンクラだった?
ステイサムにとっては映画初出演、リッチー監督にとっては初の長編映画となった『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』。ロンドンの下町が舞台の本作は、ケチな商売で小金を稼ぐ4人組が一攫千金をねらうものの、逆に有力者にハメられ多額の負債を背負うことになり、なんとかして切り抜けようとするもギャングとマフィアの抗争に巻き込まれ…と、状況が目まぐるしく変わっていくクライムコメディ。思いがけない展開が続く脚本の妙、そんな物語をテンポ良くスタイリッシュに語るリッチー監督らしさが早くも確立されていた1作だ。
そんな本作で、ステイサムが演じたのはボンクラ4人組の1人、ベーコンというメインどころのキャラクター。露天商として住民に商品を調子良くアピールしたり、その直後に警察に目をつけられれば一目散にその場から逃げたりと、とにかく小物感がプンプン。酒を飲んでノリノリではしゃぐ姿まで見せつけており、顔こそ強面のくせに風格はゼロという、現在のイメージからはかけ離れた姿はもはや貴重だ。
さらに、リッチーの2作目となる2000年の『スナッチ』では、ステイサムが主演を務めている。本作もロンドンを舞台にしたクライムコメディ。強盗団のボスでギャンブル中毒のフランキー、裏ボクシングのプロモーターコンビのターキッシュとトミー、天才的なボクシングの腕を持つミッキーといったキャラクターたちが、一つのダイヤを巡る騒動を繰り広げる群像劇が、二転三転する展開で小気味よく語られていく。
ミッキー役のブラッド・ピットやフランキー役のベニチオ・デル・トロといったスターが顔をそろえた本作では、ミッキーを利用した八百長で一儲けしようとするターキッシュを演じているステイサム。試合展開に関する指示を守らないなど自由奔放なミッキーに手を焼いて困惑したり、街の大物に及び腰になったりと、スターたちが街のチンピラにすぎない感じをなんともうまく演じて見せていた。
明暗別れた両者が5年ぶりにタッグを組んだ『リボルバー』
さらに2005年の『リボルバー』でタッグを組んでいる2人。この5年の間で、ステイサムはジェット・リーとの共演作『ザ・ワン』(01)でアクション俳優として本格的に歩みだすと、初期の代表作「トランスポーター」シリーズと出会い、“寡黙な男”という現在まで貫いている方向性を見いだしていく。
一方のリッチーは、当時の妻であったマドンナを主演に迎え、過去2作とは大きく異なるジャンルであるラブストーリー『スウェプト・アウェイ』(02)を作り上げるが、これが興行的にも批評的にも失敗に終わってしまった。
そんな経緯があっての『リボルバー』は、ステイサム演じる罪を着せられたギャンブラーが復讐に燃えるという物語を軸に、様々な思惑が複雑に絡み合う様子を描くクライムアクション。『トランスポーター』(02)のリュック・ベッソンが製作に名を連ねており、これまでのリッチー作品よりも少し、シリアスな雰囲気を帯びている。
ステイサムが演じたのは、獄中であらゆるペテンを習得し、出所後、賭博で無敵を誇るようになる頭脳派のジェイク。物語の中心ということもあり、これまでのチンピラなキャラクターに比べ、グッと重みのあるたたずまいや、ニューロティックなテイストも芝居に盛り込み、この主人公を信じていいものか?と思わせる演技で観客を惑わせた。