盟友ジェイソン・ステイサム×ガイ・リッチーのデビューから最新作までの歩みを振り返り!
メジャー大作で互いに存在感を発揮!
その後、ステイサムはアクションの道を邁進し、ほとんどの作品で圧倒的な強さを誇る主人公として君臨。アドレナリンを分泌させ続けていないと死んでしまうという設定の殺し屋役(『アドレナリン』)では、ドラッグからセックスまであらゆる手段を用いて生き延び、『MEG ザ・モンスター』(18)では巨大ザメ相手にほぼ素手で立ち向かうなど、もはや死なないということがギャグとして成立するまでに至った。
さらなるビッグタイトルにも出演するほどの存在となり、名だたるアクションスターたちが大集合した「エクスペンダブルズ」シリーズでは、初期に共演したジェット・リーやドルフ・ラングレンらがいるなか、主演のスタローン演じるバーニーの右腕、リー・クリスマスというキャラクターで存在感を発揮する。
また「ワイルド・スピード」シリーズでは、主人公たちに立ち塞がる最強の悪役、デッカード・ショウ役でシリーズに登場すると、さらなる強敵の出現に乗じて、しれっと主人公たちに協力するポジションに。スピンオフ作『ワイルド・スピード/スーパーコンボ』(19)が作られるなど、シリーズ屈指の人気キャラクターの座をつかむなど、イギリスからハリウッドきってのアクションスターへと上り詰めて見せた。
それまですべての作品で監督と脚本を手掛け、あくまで個人的な作品づくりを続けていたリッチーはその段階から一歩先へと踏み出し、2009年に初の超大作となる「シャーロック・ホームズ」シリーズの監督に抜擢。得意とするロンドン犯罪モノではあるが、一気に規模感が大きくなるなか、流れるようなアクションと意外性に富んだストーリーを両立させ、さらにキャラクターも魅力的に描くなど、手腕を発揮した。シリーズ2作合計で、10億ドルを超える大ヒットへと導いて見せた。
さらにディズニーの長編アニメーションを実写でリメイクした『アラジン』(19)では、ミュージカルという新領域に初挑戦すると、華やかな世界を見事にスクリーンに映しだし、1作で10億ドルを超える興行収入を叩き出し、ヒットメーカーとしての地位を確固たるものにした。
最強の男、ステイサムに寄せた『キャッシュトラック』
そして前作から16年、互いに大きく成長した2人が再びタッグを組んだのが『キャッシュトラック』だ。ロサンゼルスの現金輸送の警備会社に入社してきた冴えない男、H(ステイサム)。初めは誰からも気に留められない存在だったが、ある日輸送車が強盗に襲われると、驚異的な銃の腕前と敵をまったく恐れない度胸で、あれよあれよという間に敵を一掃してしまう。このことをきっかけに、社内の英雄として一目置かれるようになるが、一方でその正体を疑われ始めるH。そんななか、会社に2億ドル弱もの大金が集まるブラックフライデーの日が訪れ…。
これまでのリッチー映画に見られたポップでスタイリッシュな演出は皆無で、シリアスかつ容赦ない暴力描写が繰り広げられるノワールテイストの作品となっている本作。映画内での強さのインフレが著しいステイサムのイメージに寄せた1作では、ステイサムの貫禄も過去一。笑顔ひとつ見せず容赦なく敵を撃ち殺す鬼のような姿には、強盗たちもその顔を見た瞬間に逃げだすほどだ。
これまでで最も暴力的というチャレンジングな作品を、ひりつくような犯罪描写で武骨に表現し、その手腕を発揮した一方で、悪党なのか?英雄なのか?とHの正体を巡り、物語が複雑に絡み合っていくリッチーらしい物語の妙も健在。リッチー監督とステイサムのキャリアでの進化を示しているかのような1作となっている。
MI6を舞台にした次回作『オペレーション・フォーチュン:ルセ・ド・ゲール』では、監督×主演タッグに加え、ステイサムが製作、共同脚本にも名を連ねており、これまでの作品以上に彼らの関係性が楽しめる作品になるに違いない。
文/サンクレイオ翼