ここは現場?没入感たっぷりの『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』の魅力をレビュー!|最新の映画ニュースならMOVIE WALKER PRESS
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コラム 2021/11/4 8:30

ここは現場?没入感たっぷりの『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』の魅力をレビュー!

嵐にとって初となるライブ・フィルム『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』が、ドルビーシネマ先行上映にていよいよ公開。日本での公開に先駆け、第24回上海国際映画祭のGala部門とDolby Vision部門に出品された本作には、日本のエンタテインメントの最高峰が集結した。そんな彼らのライブを臨場感たっぷりに体験できる、劇場版ならではの見どころをお伝えする。

2018年11月から2019年12月まで1年以上にわたり、計50公演、累計237万5000人を動員した嵐の20周年記念ツアー「ARASHI Anniversary Tour 5×20」。本作は、ツアーさなかの2019年12月23日、撮影を名目に開催された「ARASHI SPECIAL SHOOTING "5×20" at Tokyo Dome 2019.12.23」の模様を収めた作品である。

『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』ドルビーシネマ版ポスター
『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』ドルビーシネマ版ポスター[c] 2021 J Storm Inc.

「ライブは一瞬一瞬、先が読めないもの。1秒たりとも取りこぼしをしたくなかった」という堤幸彦監督の想いのもと、125台のカメラが用意され、嵐の5人を、熱狂するファンを、演出のすべてを追った。また“撮影のためのライブ”という名目こそあるものの、ライブ自体は撮影用にカットをかけたりすることなく開催。ゆえに、ライブ感をそのまま映しだす作品に仕上がった。

松本潤が総合演出を手掛ける嵐のライブについて「時間をかけて丁寧に作りこまれた舞台」と表現した堤監督。「大切なのはファンと嵐。カメラはその姿を撮りたい」という想いから、彼らの動きには一切制限をかけなかったという。監督が出した指示は「自由に楽しんでほしい」ただそれのみ。まさに“Record of Memories”――二度とない、そして“嘘のない瞬間”を、カメラは記録した。

カメラの“リアルな目線”により、その場にいるかのような没入感を体験

作品は、東京の夜景から始まる。東京ドームが18時を迎えるその時、世界各地はそれぞれの時刻を刻む。ホノルル、ニューヨーク、ロンドン、ベルリン、パリ、バンコク――地球をぐるりと廻り、シーンは再び東京へ。続いて、デビュー当時から現在までの写真が時間軸を映しだす。同じ星で共に生きている“現在”、グループ結成から25年を経て辿り着いた“現在”、あらゆる偶然と必然が重なり合い、嵐がいる“現在”――スケールの大きな演出が、その事実をより尊いものにする。

1曲目は「感謝カンゲキ雨嵐」。手のひらサイズのドローンカメラが嵐のすぐそばで、5人の表情を捉える。悲鳴にも近い声援があがる瞬間、全身に鳥肌が立つのを感じた。ファンの前に登場する嵐の喜びと緊張感、嵐が姿を見せた瞬間の客席の興奮と感動、そのどちらをも感じられる不思議な体験だ。

コールアンドレスポンスで、会場中が熱を帯びていく。メンバーが「もっともっと」というふうに大きく手を動かすと、呼応するようにペンライトが揺れる。嵐がどれほどの歓声を浴び、笑顔を向けられ、愛を感じているのかがありありと伝わってくる。

ライブならではの派手な特殊効果や、嵐と共に長年踊ってきたライブの定番曲披露に、ファンのボルテージは早くも絶頂。お馴染みのムービングステージに乗り、嵐はファンの近くへ。LEDが駆使されたそれは、移動装置の域を軽々と飛び超えたエンタテインメントだ。ファンのすぐそばまでやってきた相葉雅紀は、この広い会場でも一人一人を見つめるように優しい表情を浮かべ、終始ライブの“楽しさ”を牽引していた。

ライブディスクではなかなか見ることのないアングルも本作の見どころであり、作品に臨場感を与えるスパイスである。例えばメンバーが「上のほう!」と呼びかけ、指をさすと同時に、上段の客席目線のカットが差し込まれる。それは決してクリアなものではなく、前後左右のファンによって視界がさえぎられる“リアルな目線”。これにより、まるで自分がライブ会場にいるかのような没入感を味わうことができる。

遠いはずの「嵐」が確実に“ここにいること”を感じられる

常に嵐の姿を追い、いかなる瞬間も隙なく捉えるカメラは、その本質をも映しだす。ステージ上で横並びに、ぎゅっとひとかたまりに集まる嵐。肩に手をかけたり、背中側で手をつないでいたりと、仲睦まじい5人がそこにいた。嵐に対し、親心にも近い愛情を持つ堤監督だからこそ切り取ることのできた等身大の5人の姿は、物理的には遠いはずの「嵐」をぐっと身近なものにする。近いけれど遠い、遠いけれど近い――手の届かぬ煌めきと、相反する親近感。この共存こそ、嵐が“国民的アイドル”と呼ばれる所以だろう。

「Monster」や、大野智のソロダンスシーンでは、圧巻のパフォーマンスと演出への、どよめきや感嘆も伝わってくる。美しいスクリーン演出とダンスを融合した、最高に贅沢で有意義なドームの活用法。その一方、例えば「a Day in Our Life」では、スキャット、ボーカル、ラップを重ねた、ありのままの“嵐力”で真っ向から勝負する。演出の力を借りるのではなく、もちろん演出に負けるはずもない。嵐と最新技術との相乗効果が、ドームを上質なライブ空間に変える。

「果てない空」では情感たっぷりに歌いあげる二宮和也の表情を、「アオゾラペダル」では真剣な表情でピアノに向かう櫻井翔の指先やペダルを踏む足先までもカメラは捉えていた。俯瞰で観る、壮大かつ美しい映像演出と、ディティールとのスイッチングは効果的なメリハリを生み、嵐が確かに“ここにいること”を、観る者に訴えかけてくる。

嵐の軌跡を辿る楽曲「5×20」。表情をありありと伝えるソロカットから、貫禄と絆を感じるグループカットへのスイッチング、歌詞、歌声、演出――すべてが重なり合うその瞬間、胸にこみ上げてくるものがある。あえてこれ以上の言及はしない。どうかこの曲を、彼らの想いを、大きなスクリーンで感じてほしい。

【写真を見る】「1秒たりとも取りこぼしをしたくなかった」という堤監督の想いが詰まった『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』。嵐の活動休止前最後となったライブに、想いを馳せながら鑑賞したい
【写真を見る】「1秒たりとも取りこぼしをしたくなかった」という堤監督の想いが詰まった『ARASHI Anniversary Tour 5×20 FILM “Record of Memories”』。嵐の活動休止前最後となったライブに、想いを馳せながら鑑賞したい[c] 2021 J Storm Inc.


終演後のステージ裏。アンコールの声に耳を傾ける彼らの姿が映しだされている。ここだけは、堤監督から嵐に「正直な表情を撮らせてほしい」と伝えていたという。ステージはすべて終了し、嵐が再び登場することはないのだが、彼らを求めるファンの声はやまない。三者三様の表情を浮かべる彼らがなにを思うかは、彼らにしかわからない。そして世界中でこの5人にしか共有できない想いが、きっとここにあるはずだ。

この夢の続きを、いつかまた観られるだろうか。姿こそ見えないが、嵐が再び現れたかのような、割れんばかりの大歓声で本編は終了する。余韻と希望を与えてくれる、印象的なラストカットだった。

多くの人にとっての“戻りたい場所”が映しだされている

同公演が開催された2019年、我々はまだ未知のウイルスの脅威など知る由もなかった。本作冒頭、5万2千人ものファンが埋め尽くす客席を見て、一斉に上がる歓声を聞き動揺した自分に驚いた。この日から2年弱、収容人数を制限し、発声を禁止したライブに日々戸惑いや寂しさを感じながらも、いつのまにか慣れてしまっていたのだと気付かされた。

思いのままに声を出し、身体を揺らし、空間を楽しむ笑顔――本作には、多くの人にとっての“戻りたい場所”“戻るべき場所”が、美しいまま映しだされていた。だからこそ、切なくなるほどの煌めきがある。これは嵐のファンのみならず、多くのエンタメファンが感じるところであろう。当たり前だった幸せを、いつかまた感じたい喜びを、諦めてはいけない。ゆっくりでも良いから、我々はここに向かって進んでいかなければならない。戻るべき場所はここに、目指すべき場所はここにあるのだと、本作が改めて思い出させてくれた。

「Record of Memories」。Memoriesが再び動き出す日までの宝物だ。

文/新 亜希子