第34回東京国際映画祭で、橋本愛にバフマン・ゴバディ監督が「一緒に映画を作りましょう」とラブコール!
現在開催中である第34回東京国際映画祭(TIFF)で連日行われている「国際交流基金アジアセンター×東京国際映画祭 co-present トークシリーズ@アジア交流ラウンジ」。11月4日には、フェスティバル・アンバサダーを務める橋本愛が登壇し、コンペティション部門に新作『四つの壁』が選出されたバフマン・ゴバディ監督とオンラインで語り合った。モデレーターは東京国際映画祭プログラミング・ディレクターの市山尚三が務め、イベントはオンラインでも配信された。
バフマン・ゴバディといえば、『酔っぱらった馬の時間』(00)や『亀も空を飛ぶ』(04)、『ペルシャ猫を誰も知らない』(09)などで海外の映画賞を多数受賞してきたイラン出身の監督で、現在はトルコを中心に活動している。
橋本は「私は不勉強で、ゴバディ監督の映画を観たことがなかったのですが、今回『亀も空を飛ぶ』を観て、ものすごく感動しました。監督のほかの作品も全部観たいと思いました」と興奮しながらコメント。
本作はイランのクルディスタンで撮られた少年の物語だが、橋本は「実際のクルディスタンでの生活に根付いた描写がすごかったです。自分の人生とはかけ離れた、すごく苦しい状況に置かれた子どもや大人たちに胸をつかれて、いろいろ考えさせられました。映画としてのエンタメ性も高くて、すごくおもしろかったのですが、これが本当に起きていたことなんだなと、映画を観たあとは涙が止まらなかったです」と感想を述べた。
ゴバディ監督は「感想をありがとうございます。全部、現実に基づいた作品です」とコメント。さらに橋本は「子どもたちがとても印象的で、個性が豊かでした。実際にクルディスタン地域で暮らしている子どもたちだそうですが、どんなふうに選んだのですか?」と質問。
ゴバディ監督は「素人をキャスティングする時、毎回自分探しをしていくような感じです」と語り「例えば、今回の子どもたちでいえば、彼らに自分の子ども時代を見つけないと選べなかった。僕はカメラの前で役者を演出する時も、そこに自分の一部が見つからないと、上手くいきません」とその理由も述べた。
橋本はその意見を聞いて非常に納得したようで「私も必ず役の心を自分に入れないと演じられないけど、ゴバディ監督も役者さんの一部に自分を投影するというか、ちゃんと入魂するというか、役者さんとそういう向き合い方をされてるんだと知って希望を感じました」と感激していた。
また、ゴバディ監督は、橋本が主演を務めた『リトル・フォレスト』二部作(14、15)を観たそうで「橋本さんの演技を観て、昔の日本映画の黄金時代に登場する役者さんを思い出しました。リアルだし、現代の話だけど、小津安二郎監督や黒澤明監督、小林正樹監督の映画のイメージとどんどんだぶっていきました」とコメント。
橋本は「私も昔の日本映画を観ていくなかで、パワーやものすごい強度を感じます。ただ、いま生みだされている日本映画のすばらしさも感じながら演じていて、昔に戻るというのではないけど、昔の映画のすばらしいところと、いまできる最大限のすばらしさを考えながら、ものづくりをしていくのは素敵なことだなと。私自身も昔の映画をたくさん観て、もっと勉強しようと思いました」と語った。
また、橋本がじっくりと時間をかけて撮影していくゴバディ監督の撮影スタイルをうらやましがると、ゴバディ監督から「ぜひ、荷物をまとめてクルディスタンに来てください。クルディスタンの森で橋本さんと長く撮影をしたいです」とラブコールが。
橋本は、いま忙殺されていることを吐露したうえで「普段、東京で生きることが辛くなってきてしまって。でも、俳優業は東京にいないとやりにくい仕事です。だから東京を出てゆっくりする時間と、東京で『さあ、やるぞ』という時間を分けないと、(精神的に)やられちゃうなと。そういうのを“スローライフ”と、お洒落な感じで語られますが、人は本当の豊かさを知ってるんだなと。私もなにが豊かであるかを知ってるなと感じました。監督も“スローモーションの時代”と言われていましたが、私もそういう時代を作ることがやるべきことだと見えてきたので、ぜひいつか監督と一緒に映画をやれたらいいなと思います」と希望を口にした。
第34回東京国際映画祭は、11月8日(月)まで10日間、角川シネマ有楽町、シネスイッチ銀座、TOHOシネマズ シャンテ、ヒューマントラストシネマ有楽町、有楽町よみうりホールなどで開催中で、各イベントのオンライン視聴は、東京国際映画祭公式ウェブサイトで受付中だ。
取材・文/山崎伸子