今後MCUはどうなる!?マーベル・スタジオ社長ケヴィン・ファイギが語る「ホークアイ」とマルチバースの世界観
「1作目の主演をロバート・ダウニー・Jr.に決めたことでキャスティングのハードルを上げた」
1作目の『アイアンマン』(08)以降、多数のヒーローを輩出してきたMCUもいまやフェーズ4となり、ますます盛り上がりを見せている。それぞれのキャラクターに合った豪華キャストがMCUの世界観を支えてきたが、ファイギは「1本目の『アイアンマン』で、ロバート・ダウニー・Jr.という優れた俳優をキャスティングしました。その采配はとても上手くいきましたが、同時にキャストを選ぶ基準を高くしてしまいました」と述懐。
「ロバートは本当にすばらしい俳優ですが、彼がアイアンマンを演じたことで、今後登場するキャストが、その偉大な俳優と肩を並べなくていけなくなったわけです。例えばホークアイ役のジェレミーも、オスカーにノミネートされるような優れた役者ですが、ほかのキャストを決めるにあたり、我々はネームバリューや人気がある人という基準で選ぶのではなく、役にとって最適で最善な人を考えて選んできました」。
ファイギは、ディズニープラスにより、さらに彼らのよさがより広く伝えられると手応えも感じている。
「ホークアイは、いままでの作品の中でもちょっと楽しい場面や、弓矢を操る戦闘シーンなど、いろいろな側面を見せてきました。観る側としては、彼のギャップがいいのですが、本作でもそれらがもっと描かれていきます。ほかにもディズニープラスでは、『ワンダヴィジョン』のポール・ベタニーやエリザベス・オルセン、『ロキ』のトム・ヒドルストンなど、本当にすばらしい才能ある役者たちの新しい一面をお見せしてきました。今後も彼らの演じるキャラクターがそれぞれ成長して進化を遂げていくと思うので、大いに期待してください」。
「『エターナルズ』のクロエ・ジャオ監督にはオスカーを受賞する前に話を進めていた」
特筆すべき点はスタッフ陣で、ベテランだけではなく、新進気鋭の若手監督にもチャンスを与えてきたファイギ。例えば「ホークアイ」はAmazon Prime Video配信の「トゥループ・ゼロ-夜空に恋したガールスカウト-」(19)で注目されたアンバー・フィンレイソン監督とケイティ・エルウッド監督コンビを抜擢。現在公開中のマーベル・スタジオ最新作『エターナルズ』は、第93回アカデミー賞で作品賞、監督賞、主演女優賞を受賞した『ノマドランド』(21)のクロエ・ジャオ監督がメガホンをとった。
「監督を決める時、もちろん過去作品も判断基準にしますが、重要なのは実際に本人と会って、時間をかけていろんな話をしていくことです。そこで意見が合うか合わないか、つまり同じ波長を持っているかどうかを感じとることができますし、彼らがなにか新しいビジョンを持っているかという点もわかります」というファイギ。
「『エターナルズ』がいい例ですが、クロエ・ジャオ監督を引っ張ってきたのは、プロデューサーのネイト・ムーアです。実は彼女がオスカーを受賞する以前にお会いして、話を進めていましたが、彼女はまさにすばらしいビジョンを持っていました。才能はもちろん重要ですが、我々と未来を一緒に築いていけるかどうかという点を一番に見ます。だから、たとえ大きな予算の作品を撮った経験がなくてもいいんです。『マイティ・ソー バトルロイヤル』のタイカ・ワイティティや、『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』のルッソ兄弟、『ブラック・ウィドウ』のケイト・ショートランドもそうでした」
また、今後のマーベル作品について気になっているのが「マルチバース」の世界観だ。アメコミではおなじみだが、パラレル・ワールド的に、いろいろなキャラクターがいろんな次元で存在していくという描き方である。
「僕はマルチバースが、とてもすばらしいストーリーテリングのツールであると常々感じていたので、今後はいろいろな作品で取り入れていこうかと。すでにディズニープラスの『ロキ』というシリーズで、マルチバースに踏み込んでいるところがあるし、『スパイダーマン』の新作映画でも少し触れていますし、アニメーションの『ホワット・イフ...?』などもそうです。『Doctor Strange in the Multiverse of Madness』では、タイトルにも“マルチバース”が入っていますし、まさにフェーズ4ではそれを深く掘り下げていきたいです」とのこと。
そうなると、可能性が無限大に広がりそうな予感!最後にファイギは「マーベルのとても重要なキャラクターたちをいろいろな形で描くことができるから、よく知っているキャラクターの違ったバージョンとも出会うことができます。コミックスでは元々マルチバースが描かれていたし、映像作品でも前々からそうしていきたいと思っていたところ、ようやくできるようになった感じです。本当に今後がとても楽しみです」と、意気揚々とインタビューを締めくくった。
取材・文/山崎伸子